プーリーでの倍力締め込みに必要なロープの長さ
実用はあまり無いでしょうけど、目安ってことで作ってみました。
ロープの長さは、支点間距離の10%を締め込み区間として使うことを前提にしています。そしてその区間の距離にプーリーでの折り返し回数をかけた数値です。10%以上伸びるようなラインだと、もっと締め込み区間の長さが必要なので必要なロープも長くなります。逆に伸びにくいラインだと、この区間は短くてもいいということになります。多くのロング用のラインはポリエステルorポリアミド製で10%も延びなくて3~7%前後だと思います。
*トリック用の1インチは10%近く伸びるラインもあります。古いタイプのロング用のナイロンラインはこれに近いくらい伸びます。
当然ながら支点間距離が長いほど、プーリーが多いほど、ロープも必要になるのでそのあたりのバランスを考える必要があります。となると、締め込み(メインテンショニング)区間のプーリーは距離が長いほど必要なロープが長くなり折り返し回数を増やせないので、引きこみ(サブテンショニング)区間でがっつり引けるレイアウトが望ましいこになります。もちろん、どうせ使うなら効率の良いプーリーが一番。
そこで意外と重要になるのが、ブレーキ(ロッキングデバイス・下降器・ビレイデバイス)の効率の良さ(摩擦の小ささ)かもしれません。摩擦の小ささに関しては、本来の用途ではないのでデータに出ない部分だとは思うけど、カムは大きいほど効率が良くなるし強度的な安心感も増しますよね。理想はCMC MPDのようなプーリー内臓のデバイスでしょうけど、むっちゃ高いから現実的にはあまり選択肢はない感じ。
*豆知識1:締め込み区間の折り返し回数が多いほどロープにかかるテンションは少なくなり、ブレーキやプーリーにかかるテンションも減ります。引きこみ区間のアッセンダーやプーリーは全く関係ありません。
*豆知識2:ロープが若干足りないさそうな場合は、ロープを引き始める前になるべくラインを引いいておくと良いです。ただロープの両端がアイ加工されている場合は、ブレーキからロープが抜けないので、ラインロッカーが外せなくなるります。注意して下さい。
*豆知識3:裏技というほど大げさなやり方じゃありませんが、セッティングの前段階でブレーキデバイスの部分は外しておき、プーリーだけで少しい引いて、カラビナなりにかけることもできます。ロープの長さが足りない時に若干有利です。この方法も、両端がアイ加工の場合はリリース時にロープがブレーキから抜けないのでやれません。
早見表
たぶんかなり余裕のある数値です
**** | 必要なロープの長さ | |
支点間距離 | 5:1システム | 6:1システム |
30m | 15m | 18m |
50m | 25 | 30 |
70m | 35 | 42 |
80m | 40 | 48 |
90m | 45 | 54 |
100m | 50 | 60 |
120m | 60 | 68 |
150m | 75 | 90 |
200m | 100 | 120 |
250m | 125 | 150 |
300m | 150 | 180 |
*目安です。結構余裕のある数値だと思います。65m6:1システムの場合にロープ22mでもなんとか足りたので。
*起点の結び目、ブレーキから出た引き手などの長さは考慮されていません。+αのロープのさ長が必要です。スペースも狭くなるので長さは余裕が必要です。伸びにくいラインならこれより短くても済みます。
*5:1システム・6:1システムというのはロープの起点からブレーキデバイスまでの区間のことです。ダブルプーリー2つなら5:1システムになります。ブレーキデバイスは折り返し回数にカウントしません。
計算式
必要なロープの長さ=(支点間距離*10%)*(倍率)
倍率はプリーの数+1です。
ロープの種類について
スラックラインではスタティックロープを使うのが理想
クライミングに使うダイナミックロープは、びよーんと伸び縮みするので使えません。伸びにくいスタティックロープが通常は使われます。伸びにくいと言っても、リギングの場合は結構伸びます。
スタティックロープとセミスタティックロープは違うのだが・・・、スタティックと言われている
スタティックロープにも、セミスタティックロープとセミがついていないスタティックロープがあります。この両者は通された規格が違い、表記されている伸び率の条件が違います。
セミスタティックのスペックの伸び率5%以下ってのは、50キロを釣り下げた状態にさらに100キロの物を下げた場合の伸びた数値なんです。セミじゃないスタティックロープは破断強度の10%で伸び率10%以下となっているので、この両者は違うということになります。セミは結構伸びてしまうと思います。つまり、スタティックのほうがより伸びにくいんです。
セミスタティックをスタティックと称して売られ、使われている場合が多い
ランドクルージングで売っているテンドンとシンギングロックのスタティックロープはセミスタティックロープになります。バランスコミュニティでもPMIのセミスティックがスタティックロープとして売られています。海外ではあまり、セミスタティックという概念がないのかもしれません。あ、スラックラインブラザーズはスターリンのスタティックロープです。
ということは、スラックラインでは実際はセミスタティックがよく使われていることになります。実際自分も、シンギングロックのセミスタティックロープを使っています。
太さ、素材について
このようなスタティックロープはワークとかレスキュー・ケイビング用として売られています。素材はナイロン(ポリアミド)よりポリエステルのほうが伸びにくくていいはずです。また、ロープの直径は10.5mmか11mm以上になります。折り返せば強度はクリアするのですが、あまり細いとブレーキデバイス部分で滑る可能性があるからです。伸び率や安心感では11mmですが、重さを考えると10.5mm。ロングラインのリギング専用として買うなら、11mの方がいいのは間違いないのですが、長いロープは当然ながらどどんどん重くなるので10.5mmを使っている人が多いみたいです。というかほとんど。
新品ロープを使うときの注意
ロープはコイル状の状態からそのまま伸ばすと巻きの回数だけ、捩れてしまいます。ロープの捩れはキンクといいます。特に新品から使うときは巻き癖もついていることに加え、小さく巻かれている場合が多いので、適当にロープを引っ張り出すと盛大にキンクします。長いのは特に注意です。酷くキンクしたままあまりにも強いテンションをかけると、そのの部分は傷んでしまい、これは回復しません。キンクさせにくい伸ばし方があるので最初はその方法を使い、念のために数回キンクをとる作業を繰り返してから使ったほうがいいかもしれません。
また、おまじないですが新品の場合はいきなりぎちぎちまで引くのではなく、ゆっくりなじませる感じで時間をかけてロープに負荷をかけていく方が寿命が延びるかもしれません。なにせ、ロングラインのテンションはかなり大きいですから。
その他の注意点
購入時のデータシートは保存しておく。ロープ用以外のペンでマーキングしない。ロープは踏まない、汚れないようにシートの上でなるべく使う。濡らさない。濡れた場合は、完全に乾かす(芯まで乾かすには数日かかります)。必要以上に紫外線に当てない。古いロープは使わない(使ってなくても寿命は最長10年~12年)。ロープの使用記録(ロープジャーナル)を残して管理する。外皮が傷んだロープは使わない。同じ末端の方だけ使いつづけると、そこだけ痛むので定期的に入れ替えて使う。