ロングライン用ハングオーバーシステムの紹介と計算

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歩き方

2009年からスラックライン乗ってます。国内旅程管理主任者、日本山岳ガイド協会公認ガイド(自然Ⅱ登山Ⅲ山岳Ⅰ)、NACS-J自然観察指導員。アウトドア好きでキャンプ、星、植物、お魚好き。
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ハングオーバープーリーシステムとは?

ロングラインを張る場合は通常はロープやプーリーを使いますが、ハングオーバーシステムはライン(ウェビング)そのものを使いテンションを確保して張ります。

核となる道具は、ラインをつかむライングリップとハングオーバーです。
テンションのリリースはできないので、スローリリースをどちらかのアンカーに取り付けて行います。

そもそもはスイス人のバッキンガムさんが城にライングリップとライン用プーリーひとつでハイラインを張り渡したことからバッキンガムメソッドとも言われましたが、それを発展させてさらに強力に通常テンションも確保できる方法がハングオーバーを使ったロングライン用システムです。

簡単に用語解説

  • ハングオーバー ライン用プーリー付きカラビナ
  • スラックテビティ SLACKTIVITY 海外のスラックライン用品メーカー。日本ではスラックラインリサーチが代理店。
  • ライングリップ ラインをつかむ器具
  • スローリリース ウェビングを使いテンションを抜く方法
  • kN キロニュートン 1kN=約100㎏の力
  • 3:1 1で引くと3でラインが張れるシステム メカニカルアドバンテージ 摩擦ロスを考慮しない
  • マルチプライヤー ラインをつかんでシステムをかけ合わせる行為
  • 効率 折り返し部分の摩擦で失われる力を考慮した数値%
  • 手元で引く力 ラインを張るために人力で引く力
  • ラインのテンション 歩行用ラインの張りの強さ
  • 理想倍率 イデアルメカニカルアドバンテージ Ideal Mechanical Advantage (IMA)
  • 実倍率 アクチュアルメカニカルアドバンテージ Actual Mechanical Advantage (AMA) 器具で測った数値で出る倍数
  • 理論倍率 セオリカルメカニカルアドバンテージ Theoretical Mechanical Advantage (TMA) 計算で出る倍数

具体的にどんなのか?

スラックライン中級者必見、ロングライン設置解説!ハングオーバー編!SRTV014
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 「ながーいスラックライン」ハングオーバーシステム&ロングライン基礎技能の解説!SRTV014 – YouTube


とにかくこの動画を見てください。
スラックラインリサーチで売られているSLACKTIVITYのハングオーバーシステム80の紹介動画です。27:1を使い支点間距離57mで4kNのラインを張っています。

特徴的なのはライングリップをロシアのスナッチを採用し価格を安くしている点。本家もスナッチを使ったセットに代わってます。

必要なものはライングリップ(スナッチ)とラインロッカー(シーホース)とハングオーバー3個とか5個。あとラインロック用リング、スローリリース。ロングラインを張るシステムとしては部品点数は少ない。
歩行時は余計なシステムも残らない。

動画の後半には乗り上がり方なども紹介されているので参考にしましょう。

ハングオーバーはやはり5個は欲しいところ。ばら売り集める方法もあるが、これから始めるなら絶対にセット品がお得。

ハングオーバーが気になって調べてみた

自分はハングオーバーリギングは興味はあるけどまだ本格的に試せていない。プーリーシステムをいくつか持ってるから、今から別システムを揃えるのは金額的にハードルが高い。

ある程度の長さのスラックラインを張るなら、引くときの摩擦ロスが少ないであろうと予測されるシーホースを使いたいところ。例えハングオーバーで張らなくてもアルミの削り出しの高品質な製品だ。

方法自体には興味があって計算ページつくたけど、実のところあんまり意味のなかった。
なぜ意味がなかったか。
実験動画から数字を抜き取ってリスト化もしてみたんだけど、結局のところどれもシステム全体の効率は50%くらい。
実験データから逆算すればラインロッカーの摩擦とハングオーバーの摩擦の検討が付きそうだったが、条件でかなり変わる様で意味をなさない。テンションが強くなるほどシーホース部分の摩擦も多くなるはずなのでプーリーのように簡単には計算できないみたい???
ラインの種類でも数値は変わりそう。15倍で引いても50%だし、3倍で引いても50%。

つまり、15倍システムの場合はその半分の7倍で張れる。
手元で1kNで引けば7kN。
あとの問題は引く量となってくる。
当然ながら長いラインを固く張ろうとするとは強い力で多くの量を引かなくてはならない。

ただ、手元で1kNというのは屈強な男性でないと引けない。ハンドアッセンダーも使えないので結び目を作るなどの工夫をすると腰を入れて引けるようになる。

一人で手元で引く現実的な力が0.5kNだとしたら、張れるラインの目安は以下のようになる。

一人で0.5kNで引く

  • 3:1 1kN
  • 5:1 2kN
  • 9:1 3kN
  • 15:1 4kN

複数人で1kNで引く

  • 3:1 1-2kN
  • 5:1 3kN
  • 9:1 5kN
  • 15:1 7kN

長さとテンションと高さの関係は計算ページで調べてください。

データ

https://www.youtube.com/watch?v=rEdHMDOHbOw
How to use the Slacktivity HangOver-Pulley System (including force measurements) – YouTube


この動画に実験データがある。
このデータだけでなく、今は非公開になっている動画からも数値を抜き出してみた。
それがこの数値。

 

仮定の数値で計算してみた

シーホース30%、ハングオーバー85%があたりが計算上では妥当な数値っぽい。

ちょうど3:1が67%で2:1となる。

効率良いのシステムの並びは3:1、5:1、9:1、15:1、27:1。

リダイレクトが入る(2+3):1と単純に折り返しを増やす7:1はロスが多い。

シーホースの効率30%
ハングオーバーの効率85%

システムIMA/ラインテンション効率% 1kN2kN3kN5kN8kN10kN15kN
3:1 67
引く力
kN
 
0.501.001.502.504.005.007.50
5:1(2+3):1460.430.861.302.163.464.326.48
5:1 590.340.681.021.692.713.395.08
7:1 470.300.610.911.522.423.034.55
9:1(3:1)×(3:1)570.200.390.590.981.571.962.94
15:1(5:1)×(3:1)500.130.270.400.661.061.331.99
25:1(5:1)×(5:1)410.100.190.290.480.770.971.45
27:1(3:1)×(3:1)×(3:1)480.080.150.230.380.620.771.15
45:1(5:1)×(3:1)×(3:1)430.050.100.160.260.420.520.78
81:1(3:1)×(3:1)×(3:1)×(3:1)410.030.060.090.150.240.300.45

自分で計算したい人はこたらでどうぞ

ずいぶん前に作ったが、大した価値無し。他のラインロッカーやライン用プーリーで張りたい人は数値をいじれば役に立つのかも。

限界に挑戦した動画


Slackline tensioning experiment – Buckingham Palace – YouTube


3×3×3×3の81倍で引いている。

メーカーは15:1以上を案内していていないのでどうなるかは不明だが、45:1も81:1も確かに計算でも軽くなる。

ちなみに81:1ならハングオーバーが7個必要。引く力がシステム内でも強くなるのでマルチプライヤーは動画のように歩行ライン用のライングリップやスナッチなどの専用品を使うほうがいいだろう。

ハングオーバーシステムはスラックラインリサーチで買えます

80だと最大約60mとのことです。

すでにプリミティブを買った人はシーホースやハングオーバー、スナッチ、スローリリースを追加購入することで張れます。

シーホースはハングオーバーシステムでもなるべく楽に張りやすいように考えられている商品なのでぜひとも用意したい。

トラブルの例

製品やハングオーバーリギングシステムの欠点というわけではありませんが、このような例があります。
ハングオーバーの接続用ショートスリングが切れている。
原因は簡単。力をかけてはいけないところにカラビナをかけて引いたから。

ハングオーバーリギングではグリップを接続して折り返すためのポイントが必要ですが、それはシーホースの穴を使います。もしくはアンカーにリギングプレートを付けて。セット品にはソフトリギングプレートが付いている万全。動画度の通りにやればいいんです。

その他、シーホースがローテンションで緩む例があります。
マニュアルを見て正しく対処してください。

まとめ

買ってないのに数字だけ計算してみましたとさ。
シーホースホシー