【どこよりも詳しい】アレックス・オノルドAlex Honnoldのすべて

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まずはじめに

世界的なカンファレンスであるTEDにてスピーチするアレックスオノルド

アレックス・オノルドはアメリカの有名クライマーの名前である。Alex Honnoldという名前は日本では アレックス・オノルド と表記されるのだが、本当はホノルドと表記すべきである(山と渓谷の本にそう書かれている)。しかし日本ではオノルドで有名になったから、今現在も日本ではオノルドで表記されている。この記事でもオノルドで表記します。

さて彼がなぜ有名かというと、命綱なしで行うフリーソロというクライミングのジャンルで名実ともに世界一の存在であるからだ。

アレックスオノルドの略歴

アレックス・オノルド Alex Honnold

1985年8月17日生まれ。10歳の時にカリフォルニアのクライミングジムでクライミングを始める。ジョシュア・ツリー国立公園で数えきれないほどのルートを登るうちにフリーソロへの欲求が高まり、2007年9月、ヨセミテのアストロマン(5.11c)とロストラム(5.11c)をフリーソロ。2008年4月、ザイオン国立公園にあるムーンライト・バットレス(5.12b)を1時間23分でフリーソロ。同年9月、ハーフドーム北西壁レギュラールート(5.12a/b)をフリーソロ。2012年5月、トミー・コールドウェルと共にヨセミテ・トリプル(マウント・ワトキンスのサウスフェース、エル・キャピタンのフリーライダー、ハーフドームの北西壁レギュラールート)を21時間15分で継続登攀、さらに6月にソロでヨセミテ・トリプルに挑み18時間55分で完登する。続いてハンス・フローリンと共にノーズのスピード記録に挑戦し2時間23分46秒の最速記録を打ち立てた。2013年にアラスカのマウント・バリル、マウント・ブラッドリー、マウント・ディッキーに向かい、アルパインクライミングでも大きな成果を上げる。2014年1月14日、メキシコの岩場、エル・ポトレロ・チコにあるエル・センデロ・ルミソン(5.12d)を二時間でフリーソロし、「人類が成し遂げたなかで最も困難なフリーソロ」の評価を得る。2014年、トミー・コールドウェルと共にパタゴニアのフィッツ・ロイ山群を縦走する「フィッツ・トラバース」に成功。この登攀で2015年、第23回ピオドール賞を受賞する。

山と渓谷 ALONE ON THE WALL より

追加事項

  • 2016、コンプリートストリーム(E8 6b)、北アイルランド、イギリス 、フリーソロ
  • 2017、フリーライダー(5.12d VI)、ヨセミテ– エルキャピタン、フリーソロ(映画化)
  • 2018、ザ・ノーズ(VI 5.8 A2)、ヨセミテ、トミーコールドウェル1:58:07世界記録更新
  • 2020、サンニと結婚(映画フリーソロにも出てくる彼女)
  • 2020 アレックスとサンニの子供生まれる
  • 2023 サンニが二人目の子ども出産 NEW

映画フリーソロ FREE SOLO

映画フリーソロは2017年のエルキャピタンのフリーソロチャレンジを映像化した作品である。監督は彼の友だちでクライマーであり写真家のジミー・チンとその奥さんエリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ 。アレックスとジミー・チンの付き合いは長い。ナショナルジオグラフィックやスポンサーのノースフェース、アルパイン分野などだ。

この作品はノンフィクションドキュメンタリーとしては2006年に公開されて話題となった「不都合な真実」をアメリカの興行収入で抜いている作品である。ノンフィクション部門でアカデミー賞をとるなど、数多く受賞している。

アレックスがエルキャピタンに挑戦する2年間を題材としており、彼の人柄や考え方、彼女との関係、ヨセミテの風景、迫力満点の綺麗な映像などが見どころとなっている。ちなみに、ドローンはあえて使われていない(よくドローン画像と勘違いされている)。ヘリは使われている。登攀そのものは再現ではなく実際の映像をもとに作られている。

日本では2019年9月公開予定の最新映画。

◆追記。みました。映画のレビューも書きました。映画フリーソロのレビュー。2010年1月にDVD発売。

◆追記。アレックスオノルドとサンニは2020年に結婚しました。

当時の記事は必ず読んでみてほしい

ロープなしで900mの絶壁を初登攀、米ヨセミテ
クライマーのアレックス・オノルド氏が、米ヨセミテ国立公園の難関エル・キャピタンの主要ルートを初めてフリーソロで登り切った。

フリーソロって何?

ヨセミテハーフドームをフリーソロで登るアレックス https://senderfilms.com/

アレックス・オノルドを理解するにはまず初めにフリーソロについて説明が必要だろう。フリーソロ・クライミングはロープ無しの真剣勝負のクライミングのジャンルと言える。もちろん落ちれば命は無い。クライミングというスポーツはロープを使って仲間に安全を確保してもらいながら行うことを前提として発展していったスポーツであるが、フリーソロではそのロープを使わない。

フリーソロで○○のルートを登るということは、すべての区間をロープ無しで登るということであり。途中の人工物をつかんだり何らかの道具(カラビナ、カム類)で一時的で自己確保をとる行為も行わない。単独で登ることも条件のひとつ。

フリーソロは特別なジャンルであり、挑戦する人は世界的にも数十人もいない。いても特定ルートを単発で登るとかの程度である。

例えば2020年の東京オリンピックの種目であるスポーツクライミングの分野でフリーソロと呼ばれる行為を行うクライマーはいない。それほど特殊なジャンルであるこを理解しておくべきである。有名なフリーソロクライマーは10名以下。しかも現在進行形で多くのフリーソロで登っている人物となるとほぼいない。現在進行形の数少ないフリーソロクライマーの頂点にいる存在と言える(同じヨセミテで活躍し、有名なフリーソロクライマーでアレックスの友人でもあったディーン・ポッターはベースジャンプで死んでしまった)。

当然ながら、フリーソロなんて気軽に挑戦できるものではない。例えば、アイルランドの海にそびえるノック・ナ・マーラ という海食柱をフリーソロで登ったイアン・ミラーは「正しいメンタルアプローチを身につけるのに10年もかかってしまった。フリーソロで挑む決心がつくまでも長い時間がかかった」と語っている。

フリーソロで死んだ人はいる?

フリーソロ専門で登っていた デレク・ハーシー の死亡を伝える新聞記事。ヨセミテのドレック・サラテという大きなクラックで有名なルートをフリーソロ中に墜落死した。雨で岩が濡れていてスリップしたと伝えられている。 https://senderfilms.com/

残念ながら多くのクライマーがフリーソロに挑戦して死亡している。上の画像の他にも例えば90年代を代表するフリーソロの名手であり世界一ともいわれたジョン・バッカーは35年間数多くのルートをフリーソロで登っていたが、自宅近い岩場の何度も登ったショートルートで墜落死している。彼はあらかじめ打たれたボルトに沿って登るスポーツクライミングを邪道と批判し、自分のスタイルであるフリーソロで登り続けて52歳で死んだ。

限界ぎりぎりの難ルートは当然であるが、容易なルートでも落ちれば即死。それがフリーソロ。

フリーソロの類似行為

以下はフリーソロの類似行為。ごく一部の人しかやっていない。ソロで登るのは大前提。

  • フレンチソロ→ボルトをつかんだり、カラビナをつかんだりしながら岩場にあるものなら他パーティーの残置物など何でも利用して登る。自己確保のためには道具は使わず、上に登るためだけに使う。
  • デイジーソロ→デージーチェーン(長さを調整できるスリング)を二本使う。危ない箇所でカム類やボルトにかけて一時的に自己確保をしながら登るが、その他はフリーソロ。たぶんディーン・ポッターが最初にやったのだと思われる。
デイジーソロで登るアレックス。難所では一時的にデイジーチェンで安全を確保するが、ロープは使わない。カラビナをつかんだりもする。 https://senderfilms.com/

フリーソロの疑問、降りるときはどうするの?

クライミングをよく知らない人が疑問なのは降りるときはどうする?というところだ。ロープを使わないフリーソロならなおさら。しかし答えはシンプル。上に登山道があればそれで下る、登山道が無ければ、あらかじめ用意したロープを使って降りる、もしくはクライムダウンする。

クライムダウンとはフリーソロで自分の体だけで下ることであるから。難易度は高い。ルートが長いマルチピッチでは現実的ではないが、アレックスはよほど長くない限りフリーソロでのクライムダウンも得意である。

ルートによってはクライムダウンが不可能なムーブもあり、それはクライミング途中にアレックス本人にもわかる。つまり、「ここを登ったらもうクライムダウンは不可能だ。最後までフリーソロで登るしかない。それが無理ならここで引き返そう。」という訳だ。具体的にどういう箇所がクライムダウンが不可能かというと、指一本しか入らないポケットである。極小ホールドはフットホールドとすることができないためにクライムダウンできない。

アレックスがなぜフリーソロで登るようになったのか?

本人はこう語っている。

「岩場で知らない人に近づいて行って、ぼくとロープを組んでくれませんかと頼むのが恥ずかしかったから」

これは 実際にそうだった。5.13のルートを登る実力があった にもかかわらず、声をかける勇気が無くて仕方なく彼は5.5や5.7というごく簡単なショートルートをフリーソロで登ったのが始まりだったのだ。ジョシュア・ツリー国立公園ではショートを中心にフリーソロで登りまくり一日で合計ピッチ数にして50ものルートを登ったらしい。2007年、つまり彼が22歳の時に5.12aまでのルートをソロやフリーソロで登っていた。

恥ずかしかったからフリーソロを登るようになったアレックスだが、必ずしも彼が人とコミュ二ケーションするのが苦手な人間だった決めつけるのは間違いである。というのも、彼は仕事をせず車中泊をしながら毎日クライミングをしていたのである。暇さえあれば登っていたのだ。だから一緒に登る仲間を探すのは大変に違いない。例えば、あのルート登りたいから、思いつく人に何人も電話をかけたけど都合付く人がいなくて仕方なくソロで登ったという具合。

生活できるように改造したバンで指懸垂するアレックス

車中泊しながら生活しているから人嫌いというわけでもない。彼と共に登った人のほとんどが、アレックスは気さくで素直と評して仲良くしている。フリーソロでしか登られない引きこもりクライマーとメディアで勘違いされたこともあったが、著書や映画を見れば間違いとわかる。人柄に惚れられて友人は多い。

バン(車上)生活が好きなアレックス

恋人のステイシーは汚くて散らかってて狭苦しいからバン生活が苦手だった。 https://senderfilms.com/

アレックスは大学中退後は父親の急死の保険金の利息で生活していた。バンは母親の借り物(映画では盗んだと語っている)。シンプルな生活をしながらアメリカ各地でクライミング三昧だったのだ。例えば、ヨセミテの天気が悪ければ違う地方の岩場へと移動する。駐車場で寝泊まりして警備員に追い出されたりしながらも、彼はこの生活が気に入っていた。有名になり収入が入るようになってからも、この上ない自由が得られるという理由で車上生活を続けている。

暇な時間にはよく本を読んでいた。特にクライミングの本は片っ端から。ヨセミテの歴史にも詳しく、憧れのクライマーが何人もいる。

現在のバンは3代目でフォードのエコノラインである。70代の友人ジョンが改造してくれてとても快適。

フリーソロでの持ち物

アレックスがヨセミテのハーフドームをフリーソロで登った時の装備が以下のリストだ。ロープはもちろん、ハーネスもカラビナも無し、バックパックもない。ハーフドームは標高差600mだか2時間50分(二回目の挑戦では1時間22分)で登っている。ipodは音楽+時計としてだが、のちに音楽の助けを借りて集中するのは邪道だと思い、彼は音楽を聴きなが登るのをやめた。

  • 長袖シャツ
  • 短パン
  • クライミングシューズ
  • チョークバック
  • チョコバー(おやつ)複数
  • 300㏄のボトルと水
  • ipodとイヤホン

子ども時代~つまらない大学

https://senderfilms.com/

母曰く、生まれた日につかまり立ちしたらしい(アレックス・オノルド本人は否定している)。

5歳の時に目を離したすきにクライミングジムの9メートルまで登った。6歳の時に滑り台を駆け下りて腕を骨折、8歳のころ一本のロープをハンモック代わりにしようとして落ちて腕を二度目の骨折。10歳からクライミングジムに通う。父親にビレイ(確保)してもらいながらコンペなどにも出場。高校では人づきあいが悪く一人でいることが多かったが、アイルランドと日本人のハーフの彼女がいた。高校の成績は優秀でカリフォルニア大学のバークレー校に進学するも大学の授業には興味がなく二学期から通うのをやめて岩場に通う。そのころ両親が離婚して、その二か月後に父親が急死。

父親の急死5か月後、マウント・タラックにてアイスバーンを100m滑り落ちてヘリで救助された。腕の骨が折れ、歯も数本折れ、鼻に穴が開いた。 片手の親指も無残な状態だった。この山はアレックス家族で何度も登っていたのだが、冬は初めてだったし、装備が十分でなかった。今現在、彼の一番大きな事故はこれであるのだが、この時の失態を繰り返したくないとアレックスは思っている。

父の死をきっかけに大学をやめ保険金の利息での生活を始める。車中泊をしながらクライミング三昧。かれは一年のほとんどを車で寝泊まりした。

アレックスはフランス語もしゃべれる。母親が外国語講師で6か国語が使える人物でなぜか家庭ではフランス語しか使わなかったからだ。日本語も多少できたらしい。

アレックスの恋人

彼の恋人の情報は結構ある。

最初の恋人は高校時代のE・Tというあだ名のアイルランド人と日本人のハーフ。二人目の恋人は6歳年上のクライマー、マンディー・フィンガー。

その後何人かの女性と付き合い、ケイティ・ブラウンと付き合うことになる。彼女は世界ジュニア選手権で優勝したこともある実力派女性クライマー。アレックスと彼女はTVCMで共演もしている。

そして次の彼女がステイシー・ピアソンだ。彼女がアレックスのFacebookアカウントに友達申請したことが、付き合うきかっかけとなった。しかし、二人のライフスタイルは両極端で食い違うことも多く、しょっちゅう喧嘩をして一時的に別れては再び付き合うを繰り返している。アレックスは彼女との関係に複雑な感情を抱きながら、その感情をフリーソロにぶつけて入念な準備もせずに難ルートを登ったりしているのだが、結局別れてしまう。

そして今現在?の年下彼女がサンニである。映画フリーソロで出てくる女性だ。彼女はアレックスに教わりながらクライミングを始めたのだが、そそっかしい彼女はアレックスのビレー中にロープの長さを間違ってアレックスにけがを負わせてしまうほど。。。彼女とアレックスの関係も映画のエッセンスとなっている。

サンニとAlexは結婚しました2020年9月。追記

アレックスは食事で肉を食べない

木の枝で食べるアレックス。山ではスプーンやフォークは使わない主義だってさ。 https://senderfilms.com/

アレックスはベジタリアンでも有名である(2013年くらいから)。小さい頃は偏食だったが、車上生活をしているうちに自然とベジタリアンになったそうだ。厳密なベジタリアンでなく、卵や乳製品も食べる。簡単に言えば肉や魚は食べない食生活。お酒は一切飲まずに甘いものは好き。

肉を食べない理由は車には冷蔵庫がないから。 なんとも合理的な理由だ。 肉を食べるのは外食する時くらいだったので、ベジタリアンになるのは簡単だった。肉は環境負荷が大きいからとも語っている。

クライマーなのにベジタリアン?と思うかもしれないが、180㎝で71㎏と理想的なクライマーの体系を維持している。ビックウォールを登るには体重はなるべく軽い方が体力の消耗も少ない。余分な筋肉は邪魔だ。タンパク質はベジタブルプロテイン(大豆)で補っているそうだが、筋肉のために必ず摂取しているわけではなくお腹が膨れるかららしい。パウダーと野菜や果物を入れたスムージーが彼のお気に入りの朝食。量は多くて600~800カロリーだという。

ちいなみに、映画フリーソロになったエルキャップに挑戦するまでの5か月間はほぼ完全に野菜と卵だけの食生活だったそうである。少し体重が落ちてより健康的な体になったという。

オノルドルディングがネットで流行る

彼の代表作アローンオンザウォール。ハーフドームのサンクゴッドレッジ。

彼の最初の代表作ともいえる Alone On The Wall という映像作品があるのだが、その表紙がこれ。絶壁に背をつけて立つアレックス。クライミング史上に残る一枚と言われる。この岩棚はサンクゴットレッジ(神に感謝を)という名前でハーフドームの上部に位置しており長さ10m、通常のクライマーは膝をつきながら移動するそうであるが、かれは立ったまま移動する。というか余計な装備のないフリーソロでしか立ったまま移動できないのだけど。

この構図は「困難な状況に直面する」を端的に意味しており、マネが流行った。つまり、オノルディングだ。

アレックスは2008年ハーフドームをフリーソロで2時間50分で登った。通常なら3日かかるルートである。すごいのは2012年に再び挑戦し1時間22分で再登したことである。二度も挑戦するだろうか?かれは一度目の挑戦では少し危なっかしいことになり、次はもっとうまくやれると思っていた。実際に4年後にもっとうまくやった。このエピソードは世界最高のフリーソロクライマーという称号にふさわしい行為と思う。

ナショナルジオグラフィック米国版の表紙にもなった。赤い服の方は2011年のジミーチンが撮影したもの。 アローンオンザウォール のノースフェースの緑の服の方はセンダーフィルム。

アレックスオノルドの公演を聞けばフリーソロが少し理解できる

彼を知りたいなら入門編としてはこの映像がお勧めだ。有名なカンファレンスでの公演の模様である。映画フリーソロで登ったエルキャピタンの話がふんだんに出てくる。相当に入念な準備をしてこの登攀にかけていたことが語られている。

肉体や技術よりも精神面の比重が大変大きいのがフリーソロという分野ということが理解できる。

彼には如何にして評価された?ネットの評判は?

彼はアメリカでは特に有名なクライマーである。おそらく一番有名だろう。世界的にも一番かもしれない。クライマーとしての評価は現時点ではほぼ最高クラスともいえる。理由は簡単で他のどんなどんなクライマーも追従できないからだ。アレックスが登れない高難度のルートがあったとしても、それが彼の評価を低めるものにはならないのは、数々のフリーソロの実績の前には霞んでしまうからだ。 フリーソロでビックウォールを登るなどスポーツの範疇を超えている。

日本ではそんなに有名でないのは、フリーソロという行為が日本人クライマーからすると尋常でないと思われているからかもしれない。気狂いクライマーのパフォーマンスと一蹴する人いもいるだろう。クライミングが危険なものと誤解される!と迷惑がる人もいるかもしれない。確かにフリーソロという行為はアメリカでも度々物議をかもし、常に批判されている。

日本は東京オリンピックもあってスポーツクライミングはよく話題になるようになったが、冒険的な登山やクライミングはあまり注目されない現状がある。

そんな今では世界的に有名な彼も最初は無名だった。

例えば、あるルートにフリーソロで取り付いて、先行グループをぼろぼろのTシャツと短パンで追い抜いていく。よく見れば彼はひとりでしかもロープ無しじゃないか。追い抜かれたグループは度肝を抜かれ、あれは誰だったんだろう?となるが名前は分らない。彼は無名だし、フリーソロで登ったことをネットに書き込んだりしないからだ(実際に誰にも知られていないフリーソロは沢山ある)。

フリーソロのレベルがどんどん上がっていき、難易度や規模の大きいルートに挑戦するようになってまず挑戦したのが、彼が憧れていたヨセミテの偉人の一人であるピータークロフト1976年に一日に二カ所フリーソロで登ってクライミング界で注目されたヨセミテのロストラムノースフェース(5・11c)と300mの高さがあるアストロマン(5・11c)だった。アレックスは2007年9月19日つまり22歳の時にフリーソロで二つのルートを登った。誰にも告げずふらっと来て登ったのだけど、成功した後に友人ひとりに話すとそれがネットで少しだけ広まったのだった。大した話題にもなりはしなかったが、アレックスは登りたいと思ったルートをフリーソロで登って自信がついたのがこの挑戦だったと語っている。

ムーンライトバットレス フリー画像

彼は次にムーンライトバットレスというユタ州にあるザイオン国立公園の有名ルート(360m)に目標を定めた。トップロープでの試登で準備をした後にフリーソロで登り始める。

1時間23分というスピード記録を打ち立てた。そしてフリーソロでの初めての成功者となったのであった。彼はそれまでの最高のクライミングだったと振り返るほどの充実感をこの挑戦で感じており、まさにこの時、本格的にフリーソロの魅力にハマったといえる。ムーンライトバットレスのフリーソロはクライミングの歴史やザイオン国立公園にとっての偉業と言えたのだが、目撃した人は誰もいなかった。成功後に友達に電話をかけたのだが、そこから情報が広がりニュースがあっという間にアメリカクライミング界に広まった。ただ、成功した日が4月1日でエイプリルフールのネタじゃないかと思われたりもしたが、数日でアレックスの登攀が本当だと知れたった。

スーパートポというアメリカのクライミングコミュニティサイトがあるのだが、2007年当時のフォーラムを見ると生々しくその偉業が伝わってくる。そのスレッドは今もあるので良ければ見てください。

※トップロープでの試登も一人でやっている。その方法は終了点から垂らしたロープにペツルのマイクロトラクションを介してハーネスで接続するという、一般的なクライマーからしたら非常識な方法である。

Alex Honnold Free Solos Moonlight Buttress :: SuperTopo Rock Climbing Discussion Topic
Alex Honnold Free Solos Moonlight Buttress - SuperTopo's climbing discussion forum is the ...
Alex Honnold Free Solos Moonlight Buttress :: SuperTopo Rock Climbing Discussion Topic - page 5
Alex Honnold Free Solos Moonlight Buttress - page 5 - SuperTopo's climbing discussion foru...

ムーンライトバットレスの次の大きなフリーソロがヨセミテのハーフドームだった。準備もそこそこに登り始め、途中でうわさだけで聞いていたバリエーションルートを通って600mの壁を2時間50分で登った。有名なハーフドームだが、これをフリーソロで登ったクライマーはアレックスしかいないし、挑戦しようとしている人さえいない(アレックスは二回目のフリーソロも成功している)。

ヨセミテハーフドーム。フリーソロの場面は再現。センダーフィルムが作成した。彼にとって最初の映像作品出演だった。クライマーのスポンサーとしては世界最高ともいえる。ノースフェースがスポンサーについた。ごめんんさい。映画公開後非公開にされてしまったので、別の動画貼ってます。

この大きな二つのフリーソロは一般メディアにも取り上げられ、クライミング映像で高い評価を得ているセンダーフィルム社がいち早くコンタクトを取り、さらに作品化したことで世界中でアレックス・オノルドの名前が知れ渡った。 センダーフィルムの映像の影響力は凄い。日本人だと白石阿島、世界的にはクリス・シャーマンやアダム・オンドラなど。少しでも取り上げられるだけでクライミング界では大注目なのだ。特に白石阿島は作品の表紙になって一気に世界で有名になり、その後日本で有名になった。

フリーソロの難易度の面では最も厳しいのがヨセミテのフェニックス(5.13a、40m)、そしてメキシコのセンデロ・ルミノソEl Sendero Luminoso(輝ける道)だろう。センデロは15ピッチもあり、そのうち5・12a以上が11ピッチもある長大でしかもテクニカルなルートだった。それをフリーソロで登るなどというこうとは到底人間技ではないと驚愕されたアレックスの偉業の一つ。そして、アレックスの中でこれ以上の究極のフリーソロと思えるのがエルキャピタンだけだった。あそこはとにかくデカい。

フリーソロの動画。クラックではなくスラブが主なためにここをフリーソロで?と驚愕された。最後の笑顔が印象的だが、気持ちよいクライミングでハッピーだったかららしい。なぜかノースフェイスが映画公開後非公開にした。

アレックスはフリークライミングから外国へ飛び出しアルパインクライミングや高所登山にも参加している。主な実績としてはパタゴニアのフィッツ・ロイの全山トラバースがあり、第23回ピオレドール賞を受賞し国際的な山岳登攀の分野でも評価されている。

SENDER FILMS

アレックスオノルドの脳は特別?偏桃体異常?

アレックスのよりクライミングがうまい人は沢山いるだろう。それは彼も認めるところだ。しかし、1000m、30ピッチ以上もの壁をフリーソロで登れる人など誰もいない。今現在挑戦しようとしている人もいない。

しかし誰が何と言おうと、誰にもまねできないクライミングこそが至高のクライミングといえるのではないだろうか?今現在はクライミングの新規ルートは登りつくされており、ただ登ってだけでは評価されるようなことはほとんどなくなってきている。そのような環境の中でトライする人が極端に少ないフリーソロの分野はアレックスにとっては自分を表現できる最高の舞台だったのである。その極端に少ない分野にいる彼は、クライマーという枠をはみ出し世間一般から見てもかなり特殊な人物と言えるだろう。落ちたら死ぬのになぜ登る?頭がおかしい?そんな疑問もわくかもしれない。

彼がまだほぼ無名時代に撮られた映像作品に凄腕クライマーの一員としてチェコの岩場に遠征した作品がある。同行した有名クライマーの誰もが尻込みしる恐ろしいルート(ロープを使うがボルトが10m間隔しかない)に、グダグダ話ばかりしても進まないと登攀を名乗り出て見事登り切っている。最高にかっこいいシーン。

普通の人なら恐怖を感じてしまうはずなのに、彼にはそれが無い(実際には怖がるとこの件は否定しているし、通常フリーソロは入念な準備をして挑戦している)ということで精密検査も行われてる。

フリーソロの映画でも出てくるが、以下の記事で少し紹介されている。

ロッククライミング界のレジェンド「アレックス・オノルド」が持つ特徴的な脳とは?
ロッククライマーのアレックス・オノルド氏は2012年にエル・キャピタンの登山ルート「ノーズ」を2時間23分46秒の世界記録で登頂したことや、2017年には高さ約915mもあるエルキ...

要約すれば、「精密検をしたところ恐怖を感じる場面で扁桃体の一部が活動していなかったが、それに伴う副作用が彼には起きておらず、 恐怖心を克服する技術を習得してこのような検査結果が出た」ということ。

偏桃体についてはアレックスにも心当たりがある。サイン会で偏桃体が機能していないと研究者の人に指摘されたことがあるからだ。偏桃体は危険に対して、立ち向かうか、逃げるかの判断を行っている場所だ。遺伝子疾患で偏桃体が動かない病気もあるらしく、何を見ても怖がらないのだという。

しかしアレックス本人が言うには、自分は怖がることについては普通のレベルだという。かれは誰も知られていないフリーソロを何本も登っているが、危険を感じたり気分が乗らずに途中で登るのを止めたことも何度もある(映画フリーソロで引き返したのは初めてとあるが、あれは撮影クルーを率いている大規模な挑戦でという意味)。もし偏桃体が働かない病気なら、引き返すという選択肢をとるはずがない。

自分でも特別だと思うのは、間違いが許されない状況でも自分を保つ能力ことができる能力が身についているこだそうだ。これはぞっとするような高度感のある場所で怖いと思う、しかしだからと言って自分を見失わない。為すべきこと、動くべき動作を冷静に行うことが出来るということだろう。簡単に言えば、「怖いと思うが、足がすくんだりはしない」なのかもしれない。

アレックスとフロー状態

クライミングのフリーソロは1970年代からごく一部で行われている。エクストリームスポーツとしては最も早く生まれたのが実はフリーソロクライミングなのだ。

フロー状態とは簡単にいえば集中してパフォーマンスが高まった状態なのだが、当然ながらフリーソロはフロー状態であるというえる。アレックスから語られるのはオートマティックという言葉だ。不安なんて感じずに、自動的に体が動いて登っていく。「なんだかぼーっとした感じで登っていた」とも語っている。この先の難しい箇所のことなど考えずに、オートマティックでカラダが進む。想定していた難所もいつの間にか通過している。もちろん、これには準備や自信が必要な訳だけど、やはりオートマティックで進めない箇所が存在する。急に動けなくなり、「こんなところでなにやってるんだ?」という気になる。そういう時は意を決するしかないのだが、オノルドはこれを単なる幸運で切り抜けたと思っている。彼の理想ではそのような難所に対して十分な準備をして、必然的にオートマティックで登るのが理想なのだ。オートマティックで登れるというのは、迷いが無い事でもある。そしてそれをこなした時、フリーソロで登ったと充実感に包まれて満足できるという。

フリーソロクライマーだったディーンポッターは極限の状態でもどこに手を置いてどう登るか、「ボイス」が教えてくれると語っている。その「ボイス」の判断は絶対に間違わないらしい。この「ボイス」の正体の一部が、体が知っている、脳が知っているということだとすれば、アレックスが言うオートマティックと酷似している。

レッドブルの記事には彼のメンタルについての10の事項が記載されている。この記事もぜひ読んでほしい。

https://www.redbull.com/jp-ja/alex-honnold-interview-free-solo

アレックスオノルドの出演作品

アレックスオノルドが有名となったのはハーフドームのフリーソロがきっかけとなっている。クライミング動画で有名なセンダーフィルム社が声をかけてムーンライトバットレスとハーフドームの再現動画を作ったのが最初である。

FIRST ASCENT THE SERIES

ファーストアセントというオムニバス作品に  Alone On The Wall が収められているが、これがアレックスを一躍有名にして数多くの賞を取っている。彼の名刺代わりの一作と言える。映像はフリーソロの再現映像となっているのだが(といってももちろんロープ無しで落ちたら死ぬ)、再現と思わせないドキドキが味わえる。沢山のインタビューも収められており、アレックスの人物像が良く理解できる作りだ。

ちなみに、アレックスは講演などでこの作品を流してから話したりするそうだが、自分で見てもロープ無しの映像は冷や汗が出るそうだ。つまり、彼が怖さを全然感じないという訳ではないという一面が垣間見える。

Reelrock7 の Honnold 3.0

次にReelrock7というセンダーフィルムのオムニバス作品にHonnold 3.0 という作品が収められている。 5.13のハイボルダーに挑む様子だ。ボルダリングとは到底思えいない完全にフリーソロじゃんって感じ(これを見てハイボルダーと言われる課題を見ると明らかに低く見える)。トップロープで試登してフリーソロに挑んでいる様子がみれる。それから、ノーズのスピードクライミングの様子も収められているがこれもまたとても面白い。ヨセミテトリプルというワトキンス、エルキャピタン(エルキャップ)、ハーフドームという3か所のビックウォールを連続でデイジーソロで一日で登った偉業も収められている(95%はフリーで登っている)。体力と気力が優れて、なおかつフリーソロという武器がなければ一日でビックウォール三本登るなど不可能である。

ボルダリングとは言えないような気もする・・・。

Sufferfest

サッファーフェスト(我慢大会)という動画がある。ティザーはyoutubeで見れるが一部有料サイトで本編が配信されている。

自電車で旅しながら途中でクライミングをするという企画もの作品。1ではアレックスと相棒のシダーは22日間で自転車で1000キロ走り4000m級の山全てに一般ルート以外から登頂している。驚くべきことに二人はほとんどフリーソロで登っている。入念な準備もなくルートファインディングをしながら、あちこちでフリーソロをやりまくっている。何気ないシーンも恐ろしい。 フリーソロで登る人を撮るのもフリーソロなので結構スリルがある。 今思えばこの作品はかなりぶっ飛んでいる。

2では三週間かけて荒野をサイクリングしてデザートタワーでクライミングを行っている。この作品はコミカルな珍道中という感じなのだが、やっている主役が世界一のフリーソロクライマーというミスマッチが面白い。立ちはだかる山を次々と登っていく様は爽快だが今回はロープを使用している。見ている方も少し安心して見られる。

クライマーなら必見の映画。これを見らずしてクライミングを語るなかれ!

クライミングの歴史はヨセミテの歴史でもあった。アメリカで話題となり評価も高い映画でああったが、危険性や違法行為が明らかにされスポンサーが撤退するなどの騒動を引き起こしたほどである。アレックスのスポンサーでもあったクリフバー(チョコバー製品)がクライマーを一斉解雇したのだ。

フリーソロクライマーはジョンバッカーとディーンポッター、そしてアレックスオノルドが出てくる。アレックスはヨセミテの最先端を行く新世代の若者として描かれている。アレックス好きはぜひ見てほしい。

フリーソロ

映画フリーソロはこの記事の上部で紹介しています。

Japan Rock Trip

2018年に日本を訪れ平山ユージらと共に御前岩、瑞垣、二子山でクライミングをしている動画。日本の岩場も素晴らしいとほめている。神秘性や開拓、地元の理解などにも話が及び、彼の広い知見で岩場のことが語らている。なかなかの好人物ということが伝わってくる動画。ちなみに話にでてくるトラッドクライミングとはカム類を使いながら登るクライミングのことです。

彼は二酸化炭素を出すのを悪く思っている

人は生きていくうえで化石燃料や電機などエネルギーを使う。アレックス本人は車上生活をしているので個人のCO2排出量は少ないと思っていたが、計算してみると飛行機を使ったりしているから大きい部類だと気づきショックを受ける。

一度何の成果も得られないどころか、クライミングすらできなかった遠征を思い出して、なんて無駄な事なんだとおもったそうだ。一方で、世界のいろいろな文化などを見て回る旅の素晴らしさも彼は知っていたし、世界には今も貧しい生活をしている人々がいることも知っていた。特にアフリカのチャドという砂漠ばかりが広がるところで旅をしたとき、泥で立てた小屋と数頭の家畜だけで生活する人々を見たことは彼にとってショッキングな光景だった。何日もラクダだけを連れて道もない砂漠を旅する人。まさかこんな世界がまだあったとは・・・。

アレックスは懸命に考えて自分にもできることを始めた。それが太陽光発電を僻地に普及させるという試みだ。CO2問題と貧困問題を一緒に解決しようということである。それがオノルドファンデーションだ。

オノルドファンデーションとは?

「人々がより良く、シンプルに暮らすための支援」、それがオノルドファンデーションの理念だ。イギリスの非営利団体ソーラーエイドに出資、アメリカの低所得世帯に太陽光発電を支援、昔ながらの暮らしを営むインディアン・ナバホ居留地にも太陽光発電を設置した。

アレックスは普段から太陽光発電にはお世話になっている。というのも、車上生活しているバンの屋根に太陽光パネルがありそれで最低限必要な機器に充電しているからである。シンプルな暮らしを守りつつも少しでも快適にしたいという思いにこたえる太陽光発電はアレックスと相性が良いのである。

追記:Facebookから簡単に寄付出来ますよ。私も100ドルくらい寄付しました。

Honnold Foundation
Promoting solar energy for a more equitable world.

まとめ

あなたもアレックスのファンになりました?

もう最高の人物です。ぜひぜひ応援しましょう。映画フリーソロを見ていひとはぜひ見ましょう。ゴールドウィンのサイトにも彼の情報があります。ファンになった人はぜひ。

最新情報は彼のインスタをフォローしたらいいですよ。サンニもインスタ芸能人みたいな感じなんでフォローしましょう。

ところで、映画以後もフリーソロで登っているの?と思いますが、SNSをチェックするかぎり登っていません。新しい家族ができて心境の変化があったのかも。

Alex Honnold The Imagination | THE NORTH FACE
フリークライマー、アレックス・オノルドは、道具を一切用いないフリーソロという方法で、ビッグウォールに対峙する。フリーソロが不可能と思われた壁であっても、すべてのムーブが想像できたな...

映画フリーソロの感想記事もあります。見たことない人はぜひ見ましょう。

映画フリーソロ(アレックスオノルドのエルキャピタン)の感想
アレックスオノルドのエルキャピタンフリーソロ挑戦の映画 公式サイトより アレックスオノルドは世界屈指のフリーソロクライマーだ。フリーソロはロープやその他の確保器具を一切使わないクラ...

参考文献やサイト

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Alex Honnold
Alex Honnold is a professional adventure rock climber whose audacious free-solo ascents of...
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