スラックラインは体幹に効く?
スラックラインって体幹のトレーニングにもなるというのがアピール点のひとつと言われています。
なぜ体幹とスラックラインが関係付けられたのでしょうか?
クライミング本を読むと指・腕の筋力をアップするトレーニングと共に、体幹を鍛える静的トレーニング(ピラティス)が紹介されています。クライミングをやっている人には体幹はそれなりに認知度のある部位のようです。
そして有名なクライマーがパフォーマンスやトレーニングとしてスラックラインを紹介したこともあります。そういう下地があるので、スラックラインがクライミングのトレーニングにもなるというフレコミができあがって今も紹介されているのだとおもいます。腕だけじゃなくてほかの部分(体幹)も鍛えた方がいいよ!って感じかな。
一般的な観点だと、有名スポーツ選手が体幹トレやってるって取り上げられたのが大きいです。グーグルトレンドで体幹という言葉を調べると、長友選手が体幹を鍛えている!ってのが紹介された時期から一気に、トレンドのスコアが上がっています。当時は、サッカー選手の間では体幹って言っても知らない人が多かったそうです。その後、コアトレとかコアリズムとか・・・!まぁ要するに新しい認識として体幹鍛えが流行ったわけですよ。姿勢や体型を美しく見せる効果は確かにありますからね。
しかし、厳密にな体幹とスラックラインの関係づけの起源ははっきり知りません。思いつく起源は、単純に商品のキャッチコピーだったからかも!?ギボンの英語サイトの資料にもコアトレーニングになると書かれていました。体幹がバランスを制御する部分だから、いかにもバランス感覚に直結しそうなスラックラインが体幹に効く、という理屈もあるでしょう。
また一方で、インナーマッスルを鍛える効果もあると言われたりもします。人によってはインナーマッスル=体幹と勘違いしている人もいます。
ここで一度、二つの用語の整理をしたいと思います。
まず、体幹とは
体幹とは頭と四肢を除く、体のすべてを指します。つまり、頭と手足以外全部なのです。
ということは、非常に広範囲の部位を表す言葉なのです。おしりから首までが、文字道理に体の幹なのです。なので、例えば腹筋のトレーニングも体幹を鍛えると言えるわけです。
つまり、体幹は体の幹的な部分全部を表す大雑把な言葉なので、体幹に効くトレーニングは昔からたくさんある。なにも、スラックラインやピラティスの専売特許ではないのです。
※体幹の箇所は専門家家によってマチマチの認識があります。狭い意味では脇腹や下腹のアウターとインナーを指す人もいるようです。つまり、この考え方は骨に囲まれていない身体部分を体幹という捉え方。
ではインナーマッスルとは?
では、インナーマッスルとはなんなのでしょうか?なんとなくイメージは出来ると思いますが、もっと具体的に考えてみます。まず、インナーマッスルは深層筋と同義語です。つまり、体の深いところにある筋肉です。外からはいくら鍛えたとしても見えません。例えば、背骨の一つ一つをつないでいるのがインナーマッスルです。呼吸のたびに横隔膜を上下させている筋肉もインナーマッスルです。
なので、インナーマッスルは体幹と比べるとジャンルが異なりますが範囲的には体幹よりも狭い筋肉と言えます。体幹という言葉の中に内包される筋肉の深いところの部分がインナーマッスルなのです。
この筋肉は直接的には大きな力を出すことができませんが、姿勢を保つためには重要な役割を持ち、体中の筋肉動きの繋ぎの働きをしています。さらには、実は運動の起点となる最初の筋肉の動きもインナーマッスルによるものなのです。
例えば、100m走で走りだす時に、一番最初に動き出すのが足でも腕でもなく、インナーマッスルなのです。インナーマッスルに力が入ってから、運動する準備ができその信号が腕や足に伝わって走りだすのです。
では、体幹の中のインナーマッスル以外はなんと称するのか。
単純にアウターマッスルといいます。
つまり体幹はインナーマッスルとアウターマッスルとに分けられるわけです。
アウターマッスルとは?
アウターマッスルとは表層筋と同義語です。つまり、眼に見えるような外側の大きい筋肉です。スポーツの際に大きな力を出す、もっともパフォーマンスに差の出る筋肉です。腹筋や背筋、腹斜筋などのを指します。体幹のアウターマッスルは、四肢同士に動きを伝える中継ポイントいう大きな役割があります。例えば、野球のピッチャーが腕の筋肉だけで球を投げたりしません。体全体を使って球を投げます。下半身の動きを体幹の筋肉を使って勢いをつけて上半身に伝えることで速い球が投げられるというわけです。体幹のインナーマッスルがしっかりと体の姿勢の芯を保つ役割を持ちつつ、アウターマッスルがダイナミックに勢いをつけて下半身の力を中継して上半身へ力をリレーしているのです。
体幹の持つ大きな役割
体幹にはインナーとアウターの筋肉があるということが理解してもらえたと思います。さらに体幹にはどのような役割があるか考えてみます。
体幹は手や足の筋肉にはない重要な役割があります。それは、人間のありとあらゆる動きの姿勢を制御する役割です。手や足だけで姿勢は制御できません。また、スポーツマンの人ほど手足の筋肉が大きくなるので、一般の人よりさらに体幹には強靭な筋力と柔軟性が必要です。
姿勢を制御する役割を詳しく
体幹は様々な筋肉を駆使して体勢を制御します。その筋肉の使い方は極めて複合的です。実に数えきれない筋肉を総動員して姿勢を制御しています。体幹の役割は以下のように分類できます。
- 体幹スタビリティ—–姿勢を安定させる絶対的な力。何か別方向の力が加わっても、力強く地面に立つ力。
- 体幹コーディネーション—-下半身の動きを上半身に伝える力。右半身の動きを左半身に伝える力。
- 体幹バランス—–素早く反応し多種多様な動きで柔軟に姿勢を制御する。つまり、体勢が崩れても持ち直させる力。
- 体幹ストレングス—–体幹の筋肉が発揮できる力。完全に体勢が崩れている状態から強い筋力の力で強引に体勢を保つ。
- 体幹エンデュランス—–体幹の持久力。他の筋肉の持久力と共に重要なファクター。
- 体幹フレキシビリティ—-体幹の柔軟性が高いほど、各ファクターの底上げができる。
参考:スポーツに効く体幹トレーニング
てなかんじで、体幹はスポーツに重要な役割を持っているのです。サッカー選手が急に反転しても体勢が崩れないどころか勢いが付いている、転びそうになっても転ばない、体格の大きい外国人選手とぶつかっても当たり負けしない、全力疾走しながらも足元のボールを神業のようにコントロールする、などなど。これらの技は体幹がしっかりできていと無理です。体幹の筋力が強いだけでなく、反応性や、柔軟性も、持久力も非常に重要になります。そして、これらの動きの全ては体幹スタビリティがしっかり保てているから行えるのです。
なので、体幹の一番大事な役割は体幹スタビリティ、つまり姿勢を安定させる絶対的な力だと言えます。
さて、スラックラインと体幹の関係は?
スラックラインでトリックする場合に当てはめて、さらにはスラックラインの特徴を考えてみます。
- スラックラインは自己完結性と動的要素の凝縮されたスポーツ
- スラックラインの動きのすべてがスタビリティの向上をめざしている
- トリックとはスタビリティを保ちつつ、いかに多彩な動きが可能かに挑戦する行為
- スタビリティでカバーできない場合に、体幹バランスを駆使して体勢を持ち直す
- 体幹のストレングスとフレキシビリティ・コーディネーションが強いほど、スタビリティとバランスに有利
- トリックは一方の筋肉では体勢を崩し、一方の筋肉で保つという相反する動きを強いる動きなので、筋力消費が激しい。なので持久力(エンデュランス)が必要
つーことで、結論。やっぱりスラックラインは体幹トレになると思います。その理由は「スタビリティ」です。どちらもスタビリティに関しては共通しています。しかも動的です。生きた経験になります。経験はあまり衰えません。積み重なります。
これだけ効果の高いトレーニングはなかなかありません。今までにない動きだから、体幹のスタビリティ向上の底上げに直結しているんです。そしてトレーニングと考えた場合でも面白い!。そして、スラックラインの効果は目に見えて現れます。だって歩けなかったラインが、歩けるようになるんですよ!。この効果が実感できうるという点はトレーニングとして考えた場合に大きな美点の一つです。
体幹の目に見えるような筋力UPという面では一定以上の効果は期待できないと思います。体幹をうまく使って、なるべく無駄な筋力を使わないで姿勢を制御するのが目指すべきところだから。
すでにしっかりと筋肉がある人が、スラックラインで筋肉つけようと思ってもさほど効果はないはずです。ですが、今まで使っていなかった筋肉を鍛えたり、今ある筋肉をうまく使うことにはつながるはずです。なので全体的なパフォーマンスは上がるはずです。スラックラインばかりやってる人でも普通にスラックなお腹の人はいます。そういう人は他のトレーニングを織り交ぜたらさらに上が目指せるはず。
そんなこんなで、いわゆる体幹トレにスラックラインは当てはまると思います。ですけど、下半身の筋力や経験値を上げる効果も大きいです。特に、膝や足首の前後左右の使い方や反応性の向上には相当効果があると実感しています。
筋力は無視するとバランストレーニングともいえるかな。
んで、他のスポーツのトレーニングとして効果はあるの?
そこら辺はアスリートとしての直感に従えばいいと思います。
自分に足りない部分を補えそうなら、ぜひスラックラインをやってみてください。常識的に考えれば、いろんなバランスや筋力、精神面などプラスになりそうなことが多いはず。本気なら、想像力を総動員してオリジナルトレーニングを開発したり、常に本業のスポーツのことにつながるように頭の中で考えたりすれば効果が出るはず。
少なくとも逆効果になることはないでしょう。