プーリーシステムの摩擦を考慮して倍率計算。倍力システムの理解を深めたい人向け。

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slackline.jpを書いている人
歩き方

2009年からスラックライン乗ってます。国内旅程管理主任者、日本山岳ガイド協会公認ガイド(自然Ⅱ登山Ⅲ山岳Ⅰ)、NACS-J自然観察指導員。アウトドア好きでキャンプ、星、植物、お魚好き。
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先日使った100mロングライン装備リスト

ツリーウェア
slack.fr、ムーンウォーク
スラックプロ、ラインロッカー*2
12mmボウシャックル

スラックプロ、ソフトリリース30m、デルタ*2
ランクル、6000㎏スリング*2
12mmコングQL←今回忘れてた
エーデルワイスユニコア10.5mm 30m
Lacd ダブルプーリー*2
コング、シングルプーリー*1
ツイストQL
12mmボウシャックル
ペツルプロトラクション

スカイロテックシングルプーリー
カラビナ
ペツルベーシック
ハンドアッセンダー

このシステムについて

軽量で高効率を目指して組上げた100mまでのセット。
リギングプレート無しで6:1を実現。
マルチプライヤーは3:1、計18:1となる。

もちろんシステムの中核として最も活躍しているのはブレーキに使ってるプロトラクション。
シンプルなんだけどリリース機能は無いからスローリリース必須。

100mクラスまで張れるシステムとしてはアイテム数が少なくてお気に入り。効率が良くて張るのも早い。

ブレーキが変わるだけで、システムが高効率になる。

今回のラインは伸びにくいタイプなので、18倍でも1人で張れる。
通常ポリエステルなら30か42あたりまでシフトアップする。その場合30mロープではギリギリ足りないからプリテンショニングをしておく。

このプーリーシステムの能力は如何ほど?かどうか調べてみます。
プーリーとブレーキ部分の摩擦効率さえわかれば計算可能。

つまり、このプーリーシステムの実質倍率は11.88倍。
ということが計算できます。

摩擦を考慮してプーリーシステムの倍率を計算


1で引いた力が5や6になるのが倍力システムです。

しかし、実際にはプーリーで摩擦が発生してロスが出ます。
メイン6倍力システムの場合、ロープの起点からa,b,c,d,eと5個のプーリーが並んでいて、それぞれの地点で発生する摩擦で失われた力をfa,fb,fc,fd,feとすると以下の式で表せます。

6-5fe-4fd-3fc-2fb-fa=ブレーキ手前までの倍率

失われた力はプーリーの摩擦効率が90%としたら、1の90%なので0.1になります。
最初の1番プーリーを80%で残りを90%で計算しますが小数点が入ると分かり難いので100倍にします。

するとこうなります。

600-5*(100-90)-4*(100-90)-3*(100-90)-2*(100-90)-(100-80)=440

後のプーリー(手元に近い方)がより全体に影響がある。

計算していくと440という数値になる。
全部のプーリーが摩擦ゼロなら600になるはずだが、メインテンショニングプーリー部分は440で摩擦効率は73%。

ブレーキは計算上はメインテンショニング部分ではなくマルチプライヤーに含まれます。
仮にマルチプライヤーなしでロープを引く場合は倍率には関係ないリダイレクトプーリーの扱い。

トラクションプーリー:600-6*(100-90)-5*(100-90)-4*(100-90)-3*(100-90)-2*(100-90)-(100-80)=390

エディ:600-6*(100-50)-5*(100-90)-4*(100-90)-3*(100-90)-2*(100-90)-(100-80)=140

トラクションプーリーから直接引くと効率65%
エディは23%とかなり違います。
これにサブテンシニングシステムをつなげると効率の差が減ります。

サブテンシニング(マルチプライヤー)の計算

高効率ブレーキの場合

メインプーリー部分をサブプーリーで引いて力を乗算します。
リギングとかマルチプライヤーといわれる部分です。

3:1でブレーキ(トラクションプーリー)もプーリーもベアリング入りで全部90%を使うと仮定。

300-2*(100-90)-(100-90)=270

300が270になるってことで効率は90%。

最後に、440のロープの末端を270で掴んで引く部分を計算する。これはかけ合わせればいい。
473も276も100がいくつの数字になるかという値なので440%と270%と同じ。これらを最初の100に掛けあせると全体の倍率が出てくる。

100×440%×270%=1188

ということで100が1188、つまり約12倍になります。
本来なら18倍になるはずですが、プーリーやブレーキの摩擦が積み重なり5倍は摩擦熱として消えちゃうわけ。

5÷11.88= 0.42
5kNでラインを張る場合は0.42kNで引けばいい。

約42kg相当の力でロープの末端を引く計算となります。



※スラックラインではマイクロの方を使っているケースが多い。

厳密には引く瞬間はブレーキ部分(プーリーも同じ)が効率ゼロの状態でアッセンダーを引くのでシステム倍率は6×2になる。引き始めのほんの一瞬だけ。

これを勝手に起動倍率と呼ぶ。この数値がマルチプライヤーを増やすほど落差が出る。
実際には一人ではれるラインの限界はこの倍率を考慮しないといけないのかしれないが、分かりずらいので通常は考慮しない。

ビレイデバイスをブレーキに使用した場合

ディッセンダーやビレイデバイスなどのギアが通常では使われますので、どの程度違うか計算してみます。これらはブレーキ機能のあるプーリーとは違い、単純に折り返してカムでロックします。
エーデルリッドのエディの場合、効率は50%くらい。

300-2*(100-90)-(100-50)=230

230で効率は77%です。
およそ13%ほど効率が落ちました。
メインテンショニングシステムでは最後の余計なリダイレクトプーリー扱いで効率の影響が大きかったのですが、サブテンショニングでは最初のプーリーとなり効率の影響は少なくなります。

しかし、13%とはいえメイン部分と掛け合わせると差が実感できるほど大きいです。

100×440%×230%=1012

今回のプーリーセットの場合だと1188から1012になり、倍数で言えば約12から10へと2も減ります。

ただし、効率の良いトラクションプーリーはロープに対するダメージなどを不安な点もあり、どちらが適しているかはまた別の問題。

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まとめ

まず言っておきますが、プロトラクションをお勧めしているわけではないです。心配事も多い。
多くの人にお勧めという意味ではエディの方。

プーリーやブレーキの効率はわかりやすい数字で90にしました。トラクションプリーなどはもう少し効率が良いはず。

これらの数字は特に理解する必要はないけど、計算すると面白い。
理屈が理解できます。
リダイレクトなどが入ると足し算になる部分や倍数と関係ない摩擦箇所や重複する箇所が発生するのでもう少し複雑になります。

個人的に作った一つ一つの効率を入力できるスプレッドシートで以下のことが判明しました。

・倍数が少ないほどブレーキの効率が影響する
・プーリー数が多くなる場合は、マルチプライヤー部分も高効率プーリーが欲しい。
・一部の道具を高効率にしても劇的には違わない。やるなら全体を。
・手元に近いプーリーほど高効率を。

知らんでもプーリーシステムは楽々扱えますが、計算すれば道具を買わなくても引くの軽くなるかな?なんて疑問が少し解決できる。無駄な道具買うのが減る。

道具が欲しくなるかもしれないけど、大して変わらないってことも逆に理解できる。
価格や軽さや強度などを含めて選択する幅が増える。

参考サイト-プーリーやブレーキの効率

An In-Depth Look At Pulley Efficiency
Pulley efficiency is critical to a high-performing tensioning system. We find that switchi...