スラックラインの次世代ヒーローたちは如何にして生まれたか?

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slackline.jpを書いている人
歩き方

2009年からスラックライン乗ってます。国内旅程管理主任者、日本山岳ガイド協会公認ガイド(自然Ⅱ登山Ⅲ山岳Ⅰ)、NACS-J自然観察指導員。アウトドア好きでキャンプ、星、植物、お魚好き。
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スラックラインの次世代ヒーロー

愛知のイツキ君、兵庫のテルト君。二人とも小学生の時から大人顔負けのトリックを繰り出していたジュニアスラックライナーだった。20歳以下の現時点で世界規模みてもトップクラスのトリックライナーであることに異存がないほどの存在だ。女子ではミオちゃんが同じような感じ。

今現在小学生のジュニアスラックライナーにもすごい選手が何人かいる。小布施のエイシン君や栃木のリクト君、恋ちゃんなどだ。大人の大会ににでても上位に引けを取らない実力を持つ子供たちだ。

このようなスラックラインの次世代ヒーローは如何にして生まれたのかを考えてみようと思う。

ちょいと古いけど。超緊張するような場面で完ぺきな演技。

スラックラインの進化は急激だった

スラックラインが急激に進化したのはおよそ10年少々前だ。ちょうど今の次世代ジュニアトリックライナーが生まれたころの話。

このころにスラックラインが手軽に張れるようになり、ユーザーが増え、YOUTUBEに動画が上がる。こんなことできるかな?との疑問に誰かが挑戦して成功すれば動画が上る。そして名前が付く。成功すれば名前が一気に現実味を帯びたものになる。誰も成功しない時代のバックフリップと誰か成功してからのバックフリップ。同じトリック名でも、受け取る印象は全く違うものだ。

世界的に少しずつトリックのレベルが上がり、不可能の壁が下がっていく。動画上で一度でも視覚的に成功できるんだということを確認できれば、心理的な障害は確実に下がる。不可能かどうかを考える必要はなく、もしかしたら自分にもできるかもと挑戦できる。人間の視覚系と運動機能には極めて密接な関係がある。不可能なことを可能な事と脳に思い込ませるには実際見て見るのが一番なのは間違いない。

トリックのレベルはどんどん上がる。そして想像力の限界を超える。例えば、バットフリップがその最たる例だ。バウンスの技のバリエーションが増え横の回転数が増えていったときには縦フリップは誰もやっていなかった。想像した人も殆どいなかったかもしれない。それはもちろん、横よりも縦フリップが何倍も難しいからだ。

誰も成功してないうちは何倍難しいか?も未知数である。物理的に可能かどうかも不明。しかし、日本人の93さんが2010年に成功させてからは一気にメジャートリックへと進化し、バウンストリックの花形となった。その後はその成功率の高さから高難度の基礎トリックとして普及していき数々のバリエーショントリックを生んだ。

誰も想像しないような不可能と思えるトリックが、一年ほどで高難度トリックの入門編という位置づけになったのである。瞬く間にバットフリップのバリエーショントリックが増え難度も跳ね上がり、到底考えられなかったダブルバットフリップ(2回転)も世界中で週末に何人もの人が繰り返し成功させているほどとなった。

「不可能だ」「絶対無理」という反応も一度目にしてしまえば、その現実をすんなりと受け入れて、「もしかしたら僕にもできるかも」と変わってしまう。それは同時に「やる気」にもつながる。

トリックの進化の裏でテンションとラインの進化

高難度のバウンストリックが進化するにつれて、それらのトリックを成功させるには強いテンション量が必要であるということが共通認識となった。ラインの長さもそれまでの15mから20m以上となり、高さも上がっていく。ガチ張りのトリックラインの誕生である。

道具の面ではより強テンションを得るダブルラチェットの方法が試行錯誤され、さらに大型のラチェットやウインチ、スローリリースなどの手法が普及していく。

高さとテンション量が増えるに伴い、それと合わせてマットが充実していった。しかし、マットの数は通常は個人ではどうしようもうない問題だ。解決するために公園に愛好者がマットを持ち寄るグループセッションが全国で頻繁に行われた。と同時にそのグループセッションの問題も露呈していく。規模が大きくなればもはやイベント同然になり、何かしらの問題を引き起こし今まで張れた公園でも張れなくなっていった。

マットの面でセッションとは別の方式で解決する手法がスラックライン専用施設である。浄光寺のような拠点や、親子トリックライナーの自宅の庭など常設化することでより安心できる練習環境が生まれていく。マットの件は会場へと持ち運びするボルダリングマットでは厳しいが、持ち運びしない常設となると必要経費は相対的に下がるし見た目を気にしないならアイデア次第で比較的安く済ますことも可能だからだ。

国内最大級のスラックラインパーク[小布施スラックライン]
小布施町浄光寺のスラックラインパーク。無料で利用できる国内最大級のスラックライン施設です。

トリック難易度の壁が下がり、ガチ張り環境が一定程度一般化した流れ

トリックの高難易度化と高テンション化、充実マット化。これらの3つのことは同時進行で進化していった。より高さと滞空時間を求めれば、ラインは高くなりテンションも高くなり長くなる。派手さが上がるにつれマットも充実する。

これは今思えば当たり前かもしれないが、15mラインでシングルラチェットでバウンストリックしていた人にしたら、当時は考えもしなかった環境である。

スケボーで言えば町の公園の手作りランプと、Xゲームか何かで見たようなビックランプほどの違いがある。

しかし、スラックラインの場合はビックランプほど大きいものは必要ない。ちょっと広い家にの庭でもやる気さえあればトップクラスの環境が手に入れられる。

こんなの用意しなくていい。フリー画像。
メガランプに比べればこの環境は個人でも再現可能。プレリリースより。

トリックラインに限ればスラックラインの施設依存度は低い方だと思う。。。様々な問題に直面したりはするけど、大袈裟な専用施設は必要ない。「場所があるのに使わせてもらえない」というケチ臭い公共施設に泣いた人も、知り合いの空き地を借りてしまえば、確実に解決への道が見える。

本題。次世代スターの誕生の背景。

先輩により下げられた各種の壁

本題はスラックラインの次世代スターは如何にして誕生したか?であるが、ここまでに説明したことがその答えの半分である。

不可能の壁のレベルダウンや、環境的な進化は急激に目に見える形で行われた。

今のジュニアトリックライナーは、バットフリップが人間の身体機能的に可能か?そもそも物理的に可能か?を考える必要はなかった。目の前で先輩トリックライナーがバンバン成功させてくれる。

トリック環境もそうだ。ダブルラチェットの方法を試行錯誤し、買ったばかりなのに高テンションでギアの歯が欠けて廃棄になるラチェットを苦々しく思うこともない。リリースの度にラチェットに巻き込まれてボロボロになるラインもスローリリースの普及以後は見なくていい。そもそも専用施設では自分たちで張る必要も解除する必要もない。

ガチ張りという環境は先人の数々の犠牲もとに洗練化されていった。 当然ながら体重の軽い子供だとその要求レベルも下がる。

ジュニアの優位点

年が若いことはスラックラインのようなエクストリーム寄りのスポーツでは大きな優位点になる。「不可能」の壁は大人よりも低くなるからだ。

というか「不可能」の意味すら理解していないかもしれない。

自分にできるかどうかどうかなんてどうでもいい。成功した人がいるなら、とりあえず挑戦してみるという選択肢が容易にとれる。

大人ならまず自分にできるだろうか、その前にマスターしておくべきトレーニングがあるのではないかなどを考える。決心がついていざやろうとしても恐怖感が邪魔をする。 子供の場合は大人があーだこーだと方法を分析する必要すらなく(何か言おうとしても「もー、うるさい」と言われるのがオチだ)、さっき動画で見たコピーを思い出しながら跳ねればいい。いきなり成功できるかは別問題になるけど、この段階では心理的な壁の高さこそが問題なのだ。

恐怖感という点もジュニア世代の方が克服しやすい。今までの怪我の経験や怖かった経験などが少ない分恐怖を感じにくいからだ。恐怖の基準が大人とは違う。大人が見ていて冷や冷やする様なことも本人たちにしたら別にどうでも無い事だったりする。未発達な脳は批判的思考を行いにくいことも関係している。これはもちろん怪我のことを考えると諸刃の剣ではあるのだが、子供は子供なりの上手くケガや危険を回避するスキルを持っている。

科学的にも脳の一部の前頭葉という部分は子どものうちは未発達だという。前頭葉は研究でフロー状態に深くかかわっていることが明らかになっている。フローとはゾーンと言われたりするが、簡単に言えば極限まで集中した状態である。子供は常にフローの一歩手前で生活しており、さっきまで泣きわめいていたのに廊下に落ちていた漫画を拾うと一気に集中して漫画の世界へと入り込んでしまう。

そんな若い子供たちがスラックラインに挑戦したらどうなるか。自分にでもできるんだということが理解でき、動画にあるような数々の高難度トリックを目の当たりにしたときは無限の可能性が潜んでいる。この点は日本のジュニアトリックライナーが証明している。数年とは言わずに1年足らずでその域まで達する可能性すらあるのだ。

スラックラインにハマる子供って?

しかしながら、世の中にはたくさんのスポーツや遊びがある。高レベルにサッカーにのめり込みながら、スラックラインにのめり込むことはほぼ不可能であり、通常はどちらか一つだ。

要するに子供たちのやる気のベクトルが問題となる。ベクトルが向きさえすればある程度の環境が用意されてしまえば、有り余る時間をスラックラインに費やせばどんどん上達できるハズである。問題はいかにスラックラインに向けさせるか。

この問題のヒントはジュニア時代から大人にも勝る天才的なスケートボーダー(12歳で世界初の1080を成功させた)であるトム・シャーの言葉がヒントとなる。「スケートボードパークで友達と一緒にいるのが大好きなんだ。最高の気分になるよ」という言葉だ。

ラインの環境と共に、一緒にスラックラインを楽しむ誰かが必要なのだ。それは兄弟でもいいし、親でもいい、もちろんお兄さんや可愛くて優しいお姉さん、スラックライン大好きなオジサンでもいい。

カギとなるのは一緒に楽しむ人やその機会。

ジュニアライダーの親が業界を支える人に

トリックラインの大会の数を考えるとジュニアプロライダー(メーカーのサポートライダー)は意外に人数がいるのかもしれない。

争奪戦と言うほどではないが、大人に迫る実力があると思われれば声がかかる。そもそもジュニアの出場者が少ないトリックラインの大会の半分以上がプロライダーだったりする。

メーカーがジュニアに声をかけるもっともな理由は親も巻き込んでスラックラインを支える人になってくれるかもしれない。

最たる例は映心君だ、お父さんが新たにスラックライン推進機構という団体を立ち上げてワールドカップを誘致するほどである。確かに我が子が絡めば、親は労力は惜しまない。プロライダーとして契約できればなおのこと応援したくなる。そして我が子などの枠を超えスラックラインのグループや業界を支えるリーダーシップを発揮するほどの存在へとなる可能性は結構ある。

例えば、全国規模のラクビー団体の会長さんとかでも、自分がラクビーをやっていたとかではなく子供がやっていて世話を続けるうちに大きな団体の会長までになってワールドカップ誘致に尽力したと評価されるようなような人も存在する。

スラックライン次世代ヒーローは親御さんも含めて未来のスラックライン業界を支える重要人物になる可能性を秘めており、メーカーがジュニアのプロライダー契約をすることは良いことづくめで一石二鳥なはず。

スポーツに親が関わるかどうかでは、関らない方が良いという意見もある。

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スラックラインの次世代ヒーローたちは如何にして生まれたか?の答え

最も大事なのは、その子供と一緒に楽しめる人がいるかどうかである。決してヤラされているわけではない。大人がやらせようと思っても、絶対に上手くいかない。本人のモーチベーションが無ければ物理法則をひっくり返すような高難度トリックに到達できないことは明白だ。

専用施設に集まるスラックライン好き、週末ごとに家族で張るライン、近所の体育館で愛好家が集まって張るライン、家の庭で張るライン、イベントで張るライン、大会で大人も子供も一緒に楽しむライン。

スラックラインは集中してこそパフォーマンスが発揮できる。でも仲間がいればもっとパフォーマンスが上がる。同じ目的で楽しみながらお互いに集中して何かをやるということは人間の本能として心地良いのである。ほとんどの人はこのことを自覚していないが、確かにその空間が心地よい空気で包まれるのだ。

その心地よさの先にスラックラインの次世代ヒーローが生まれる。マジックが生まれる。

まだまだスラックラインの進化は止まらない。と思う。

次世代ヒーロースラックライナー

以下が主な次世代ヒーローのリストです。今後続々誕生するはず!

ちなみに中村兄弟のインスタアカウントはフォロワー数なんと13000人。日本人スラックライナーとしてはぶっちぎりの多さ!将来、海外に羽ばたくのは間違いなし。

んで、最近の一押しは 岡澤恋ちゃんです!

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