スラックラインとスリング
スラックラインを設置する際、スリングを使用する場合があります。微妙に長さが足りない場合とか、支点に回すスペースが狭くて使ったりとか、室内で複数のアンカーにカラビナをかけて使う場合などです。また、いつも同じ場所で張る場合は、常に同じ場所のガースヒッチの接点だけが消耗する結果となるので、そういう際もスリングを使うことでラインの保護ができます。
*ここでいうスリングとは縫い合わされてループになったクライミング用のソウスリングのこと
スリングの強度
ですが、スリングの最大荷重の限界は22kNがほとんどです。これは重量に換算すると約2.2トンという意味。クライミング用のスリングは国際規格で22kN以上しか流通させてはいけないという決まりがあるので、どれも22kNになっているわけです。実際には22kN以上ある製品が多いそうですが、記載されていわけでは無いので過信することはできません。
チューブラーとオープンはオープンのほうが強い
スリングでは筒になったチューブラーと、一枚mののオープンの2タイプがありますが、スラックラインにはオープンのほうが向いています。というのはオープンのほうが生地が厚いので、僅かに傷んでも強度的には落ちないのに、チューブラーは筒状なので生地自体は薄くなっており、もし一部が傷んだ際にテンションをかけるといっきに傷が広がって破断する可能性があります。
※傷ついて-切れ目のあるラインやスリングはスラックラインじゃ危険なので使わないでください。25mmラインなら5mm以上の明らかな切れ目ができた場合は廃棄レベルです。補修するのも限界があるので、切断して分けて使うなどのくらいかできません。
ナイロン素材とダイニーマ素材がある
以前はナイロンスリングが主流でしたが、近年はより細くて強度の強いダイニーマという素材(強化ポリエチレンでスチールと同程度の強さ、摩擦熱や経年劣化に弱い)のスリングも出始めています。というか、今売り場に並んでいるのはほとんどがダイニーマ製です。強度が強いぶん幅が狭くなり10mm程度のが多く、やっぱり最大荷重限度は22kNになっています。また、単にダイニーマと素材でひとくくりにしがちですが、ダイニーマも素材比率などが様々あるようです。なので、単に幅や厚さだけで強度は判断できないみたいです。
強度30kNの幅広ナイロンスリング
そんなスリングの中で最強を誇るのが変態メーカともいわるDMM(DMMのカタログ)の幅26mmナイロンオープンリングです。最大耐荷重は30kNを誇ります。ジブラインも同じ30kN(ラチェットは25kN)ですから、スラックラインにも安心して使える強度といえます。
なので買いましたよ。二本。やっぱり幅があって分厚い感じで安心です。
ダイニーマの方がオススメかも
ただ、ナイロンとダイニーマを比べた場合、ダイニーマのほうが擦れに強いんですよね。テンションがかかった状態で、ナイロンスリングが何かに当たって擦れると簡単に傷がつきます。ダイニーマの方がナイロンと比べると傷がつきにくいです。傷がつかないのではなく、あくまで付きにくいです。ダイニーマは摩擦熱によって溶ける温度がナイロンより低いそうですが、スラックラインで普通に使う限りはそこまで摩擦起こらないので、擦れに強い方が都合がいい気がします。つーことで、もし今度買うときはダイニーマにしようかなと思ってます。
■追記2012-11-15
今ではスラックライン用はほとんど業務用やスラックラインメーカーのラウンドスリングを使っています。
スリングの回し方とつなぎかた
※これよりもっと大きな木の場合は、カラビナが三点で引かれることになり、カラビナの強度低下につながります。高テンションのバウンストリック用に張った場合やロングラインの場合は、カラビナを三点で引く方法は使わないほうが安全です。こういう場合にはスチールシャックルを使いましょう。
あと、スリングの支点の回し方も大事です。スラックラインのエンドループのようにガースヒッチという方法で回してしまうと、強度が半分50%以下に落ちます。危険です。じつは私はこの方法で設置したがために、スリングを一本切ってしまっています。設置する際は、スリングを回して両端をどちらもカラビナに掛ける方法で行いましょう。これだと、強度は200%なのでDMMの最強スリングなら60kNまで耐えます。通常の22kNタイプでも44kNの理屈になりますからまず、切れることはないと思います(劣化している場合は別です)。スリングの回し方のエントリーをご参照下さい。
もし、複数をつなぐ際はダブルシートベントで結んで下さい。大きさが極端に違う場合は、クロスシートベントという方法を使う。この結び方は簡単で比較的強度を保ちやすく、テンションが掛かってもなんとか解くことが可能な結び方です。シートベントはスリング同士をつなぐ際には定番の結び方なので、ぜひ覚えておいたほうがいいです。クライマースリングヒッチという強度低下の少ない結び方も考案されています。
ちなみに、一部の本のスラックラインの本ではガースヒッチ(ガースヒッチ)で連結するように解説されています。この方法は簡単につなげて解くのも簡単です。でも、クライミングのサイトなどによると少なくとも-30%の強度低下が起こるとされています。
とにかくスリングは結び目を作るのに向いていません。オーバハンドノットだと-50%まで簡単に強度が落ちます。
■追記2012-11-15
バウンストリック用の高テンションラインや、ギンギンに張ったロングラインではスリングを結んで使わない下さい。かなりテンションがかかるので切れます。
スリングを結ぶときは素材の違いに注意
↑×××
通常ならそこまで考慮しなくてもいい、素材同士の強度ですがスラックラインの場合は考慮が必要です。というのも、スラックラインは強いテンションをかけるので、素材同士がお互いに食い込んで傷つける結果になります。
例えば、ギボンのラインのエンドループとダイニーマスリングをガースヒッチでつないだ場合、ギボンのラインが痛みます。
なので、できるだけ接続箇所はカラビナ等でつなぐべきです。また、トリック用やロングライン用に極端に強いテンションをかける場合は、アルミは避けてスチール製を使うべきです。また、カラビナにはサバ折りの力など想定外の方向から力をかけることも避けなければなりません。一番いいのはスチールシャックルです。
また、ダイニーマスリング自身に結び目を作ると強度は半分以下に落ちて簡単にスリングが切れます。絶対に、ダイニーマの場合は結び目を作らないでください。
まとめ
ラインを強めに張ってバットバウンスは一時的にテンションがかなりかかる。ダブルラチェットやロングラインの場合もスリングはもちろんカラビナも強度のチェックを。スリングは使い方によって強度が著しく落ちる方法もあるので注意する。素材は擦れに強いダイニーマがオススメだけど、強度の違う素材同士を直接ラインに結びつけることは避ける。