奥岳川とは?

奥岳川は大分県豊後大野市を流れる川です。その源流は祖母傾山群となっており、人家などから離れた山奥となっています。この川の特徴はその谷の側溝のような形状と深さです。谷の両側が阿蘇の噴火による柱状節理などで構成されており、大きな溝のように深い。その特有の地形ゆえに豊後大野ジオパークの中心地域となっています。川の上は山や畑がありますが、川の姿が見れるのは橋の上くらいからしかありません。どこに川あるの?って感じで普段は気づかず大きな橋の上からこんな深い谷があったのかと驚く訳です。
個人的には祖母傾山は複数回登ったこともあるので、この奥岳川を車窓から見た思い出があっても良いはずですが、まったく印象にありません(登山口付近の谷や観音滝の記憶はあるけど)。この奥岳川の深さを実感するには谷底に降りて奇怪な光景を実際に目で見る方法しかありません。谷底に別世界が広がっている感覚です。そして特筆すべきはその水質です。集水域は広いのに人家等が極端に少ないので、透明度は抜群です(上流は特に)。
川は浅いですが何か所も渕があり、その美しさに見とれてしまいます。不思議なのがその水の暖かさです。ここまで山奥だと夏でもキーンとするくらい冷たい川もあるのだけれどこの川は水遊びに最適な温度でした。様々な要因で綺麗で温かい川となっていると思われます。
ちなみに、上流には尾平鉱山がかつて開かれており無害化事業は今も稼働中です。年間4千万円以上かけて坑廃水処理が行われています。
今回のコースについて、注意事項など
今回、そんな奥岳川をパックラフト7割、歩き3割で下りました。まさにリバーハイキング、リバートレッキングというのにぴったりでした。終始素晴らしい環境で、これはこれはこれはの連続。九州にこんな原子の自然を残すエリアがあったとは。しかも限られた人しか入れないから、独り占めできます。
※水量があると歩きはゼロですべて船で下れます。当然ながら危険な瀬なども出現するのでご注意ください。その場合は仲間などど下る必要があります。
注意点としてはエスケープルートの数が極端に少ないこと。全区間を通して基本的には溝の中のような深い谷を下ることになるからです。行動中に大雨が降れば急激に増水し大変危険な状態になるから天気には注意が必要。
今回のコースは滞迫峡からカワセミ公園2.4㎞、カワセミ公園から轟橋5.8㎞、轟橋からロッジきよかわ14㎞の三区間に分けられますが、行動時間が8時間オーバーとなりました。二日に分ければもう少し上流からスタートし、もっと下流まで下るのも可能です。宿泊するならカワセミ公園でキャンプできます。他にも、スタート地点のさらに上流にはゲストハウスLAMP、ゴール地点にはロッジきよかわなどの宿があります。ロッジきよかわではパックラフトの貸し出しもしており、ロッジ周辺だけにはなりますが有料で楽しむことができます。
水量により環境は違うことは予想でき、川下りとして楽しむなら増水期が適しています(もちろん危険度などが上がる)。今回は水量少なめで多くの距離を歩きました。今回下ったのは2021年9月26日です。船は小型のパックラフトを使用しています。元気商会のエクスプローラーというモデル。
気になる瀬の難易度ですが水量不足でまともに下れる箇所が無く、9割は歩きでパスしています。岩の状態を観察すると、川で流された石が集まるポイントがあってそれが障害物となり、瀬となっているのがわかります。
水量は岸の苔のラインよりも10㎝~20㎝ほど低くなっていました。時期により、もっと低くなる時もあるでしょう。水量がある場合は壁にぶつかりカーブとなる箇所は注意が必要と予想できますが極端に危なそうなところはなく、なんとか楽しく下れそうでした。だた、危険性という意味では水量が少ない方が少ないは間違いないです。ですから今回一人でこの川を下ったのは時期的には正解だったと思っています。
川下り後の移動ですが、ゴール地点に自転車を置いておくか、メンバーと車を使うか、タクシーを使うか・・・。今回はタクシーを利用して5000円。
豊後大野 緑タクシー 0974-22-0160
パックラフト利用リバートレッキングの装備
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- パックラフト(GRIFFON RAFT エクスプローラ)
- ポンプバック
- パドル(nortik オールラウンド)
- PFD ザックも背負える感じのが良い
- ザック 濡れても重くならないもの。今回はPVC素材の軽くて丈夫な奴。
- ヘルメット (ペツルのクライミング用しかもってない)
- ドライバック 30L程度。ザック内で使うので軽いやつでok。
- 水筒 喉は乾きにくいので1L程度でよい。上流なら川の水も飲める。
- 昼食 行動食
- カメラ関係
- スマホ、財布。スマホは防水用品に入れてPFDに結束しておこう
- パラコード 頻繁に降りるので荷物はパックラフトと結束しないが、パドルとラフトを固定すると歩きやすいので各自やり方を開発してほしい。
- ナイフ、ファーストエイドキット
- スローロープバック+カラビナ。基本使わないので濡れて重くならないように。懸垂下降等で非常時に使う可能性もあるので持っていくが、使う場面はなかった気がする。
- 服装、長袖、靴、などなど着替え
荷物をラフトに結束すると歩いて瀬をパスしにくいです。場合により、背中にザックを背負ったままラフトに乗ります。ザックはなるべく丈夫で濡れても重くならないものを。登山ザックは濡れたら重い。今回、ケイビング用としても使えるから買ってみたストームトレイルのヨクスプローラーを使ったがベストでした。濡れても重くならず、水抜きができ、ラフに扱えました。使わない時はペッちゃんこになるのも偉い。
足元は大事
歩く区間が多い場合は、足元は考える必要があります。通しで下る水量があるなら、まぁ好きなやつでそうぞ。
今回は残念ながら」水量が少なかったので足元はベアフットシューズに速乾の5本指ソックスを利用。大事なのは岩で滑らないこと。
靴の好みは人それぞれですが、長時間濡れた状態で歩くとき注意したいのが砂と擦れたり、ストラップで皮膚がすれること。
フェルト底は確かに滑りにくいが重いし。個人的にはベアフットシューズとソックスの組み合わせで十分行ける。スラックラインで養ったバランス力が発揮されてスイスイ歩ける。ひざが弱い人はクッション性のある靴がイイのだが、、、やっぱり重くなるのがね。水の中を歩くときは大きな靴だと抵抗大きいけど、ベアフットシューズのようなペラペラの靴だと抵抗が少なくて歩きやすい。
個人的には底は柔らかくて水が抜けがいいのが好み。自分のバランス感覚で滑らないようにするのが楽しい。
水量について
この日は犬飼の水量で0.5でした。1あたりを狙えば通しで下れそうです。0.7くらいでもだいぶましなはず。
前半は歩く箇所が多い
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パックラフトを引いて歩く箇所が多い(この日は水量が無かったから、、、水量多いタイミング狙いましょう)。水量が少なく瀬ほとんど水量不足で下れない。正直、もし水が多かったらぁと何度も妄想しました。ラフトを引くよりも頭の上に乗せて歩くのが最も楽で速いから、距離が長そうならさっさと頭の上に担ぐ。
ラフトをもって歩くコツはパドルを上手く使うこと。パドルをラフトに細引きで固定してパドルを持ち手にして歩くのが疲れません。事前にすぐ固定できるようにフック等で工夫しておくといかも。
スタート地点は滞迫峡
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
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駐車場から少し下りれば河原に出ることができます。ちなみに、少し上流にさかのぼっての犬返橋を見ることもできます。水深は浅く、流れも緩やかなので水の中に入って歩いても問題はありません。夏の昼間は観光客が来て水遊びをしてる所です。キャニオニングツアーも行われています(帰る時は薄暗かったのですが、30人くらいのキャニオニングツアーの人が撤収していました)。
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最初の橋は廃道となっているので、グーグルマップにも載っていません。場所的には奥岳茶屋の北東にあたります。

漆渕で川は直角に曲がり東へと進む。朝日に輝くこの壁を見た時、とても貴重な瞬間を見た気がしました。
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すぐにまた大きな壁で川が曲がる。この繰り返しがこの川の面白い所。
カワセミ広場、スタートから2.4㎞
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スタートから2.4㎞地点。準備を含め2時間ほどで到着。ドローン飛行無ければ1:30分。時速1.6㎞と遅い。カワセミ広場には車道が通じておりキャンプが可能な河原があります。この日は一組のキャンパーがいました。
ここから川旅をスタートすることも可能です。
カワセミ広場の先には右側からトンネルで水が出てきているのですが、この水が肥料というか家畜の糞尿の匂いがして臭い。田んぼとか牧場の水のようで、しばらく岩のヌルヌルが多くなるほど。現実に引き戻された気がしました。
カワセミ広場から出会い橋、轟橋を目指します。距離にして3.4㎞となります。
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カワセミ広場を超えて最初の見どころ。壁もデカい。こんなドラマチックな壁が沢山あります。この渓谷は壁だらけ。いろんな遊びの可能性がある。
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瀬が所々に現れるますが、ほとんど船では通行できませんでした。大抵の場合、瀬に入る前に底を擦り始めるます。大きなごろ石が集まったところが瀬になっており、必然的に底を擦るのです。
出会い橋・轟橋
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大きな河原と岸壁のあるカーブの向こうにようやく中間地点の二つの橋が見えてきました。流れは緩やかな渕があります。一応、ここは川の西側に上の道路から降りれる(轟橋の方?)ようですが、自分が見た道は草ぼうぼうでとても歩きにくそうでした。エスケープルートとしてや出発地点として使えると思います。数年前に洪水被害で補修されています(こんなとこまで重機が降りていたらしいのでビックリ。どうやって?)。
これからは川幅も幾分広くなり、水量も若干だけ増えるますが、まだまだ歩く箇所も多かった。水量がこの日より+20cmだったらもっとパックラフトで下れたとはず。
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時折、右側に車道が見える。橋以外で車道を見るのは初めてのような気がした。とわいえ、道路まで上がれそうな道はない。左側は田んぼとなっているが上の方なので見えない。時折、田んぼからの排水が滝になっている。滝くぐりができる箇所もある。

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この川の不思議なところがなかなか水量が増えず、時には減ること。砂利に吸い取られ下流で湧き出したりしている。水量が多い時に下ってみたいなぁ。危険度は増えるだろうけど落差のある滑り台のような瀬はない。基本的に石がごろごろの川。
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このあたりまで来るとロッジで貸し出しているパックラフトで漕いでいる人もいます。流れは緩やかなので遡ってプカプカ。
ゴールのロッジきよかわロッジきよかわ
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河原があるのでそこがゴール。
時間があればさらに先の岩戸の景観 百枝鉄橋と百枝トンネルまで下ってもいいでしょう。ロッジからさらに5㎞下ります。その先は大きな堰になっています。
ロッジきよかわには宿泊できますし、トイレや更衣室も使えます。日帰りで水遊びしている人も多いです。
地図類
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まとめ
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憧れの奥岳川。滞迫峡からロッジきよかわの13.6km、8時間、時速1.6k/h。区間の標高差100mで傾斜率0.7%、つまり、100mで0.7m下る。
なぜ速度が遅いかと言うと水量が苔より10-20cm低く、歩く箇所多しで3割以上歩いたかもしれない。小型パックラフト便利〜。
最後まで見所だらけでお腹いっぱいの大満足。人工物みるとホッとする位に人の気配がしない。深過ぎてエスケープルートもほとんどない、携帯もGPSも貧弱。大量の砂利が濾過し続けるから前半は抜群の水質。
日本にこんな素晴らしい川があったとは。9万年前の歴史や地質はもちろん植物や魚も興味深くて久しぶりの大興奮でした。
さらに、帰りのタクシーの運転手さんが全然道を知らず何度も道を間違えるから呆れてスマホ見ながらナビ、さらにらさらに車はすぐ下に見えるのに道路が通行止めで壮大な回り道をする羽目になって最後の最後にトラブル続きで疲れました。
ちなみに、権現淵から滞迫峡までは3.7㎞(2:20)、カワセミ公園まで6㎞(3:40) です。水量があるときはカワセミ公園からでも楽しいでしょうね。
モデルコース
基本的にこの川は水量が足りないっぽいので歩きも考慮したい。単なるパックラフトツーリングという考えが通用しないケースがある。水量があるのは梅雨明けからお盆だろう。なるべく早く行動を初めて時間の余裕が必要。
A(今回):滞迫峡-カワセミ公園-轟橋-ロッジきよかわ
B:カワセミ公園-轟橋-ロッジきよかわ-岩戸の景観
C:1日目、権現橋-歩き多し-滞迫峡-カワセミ公園(▲キャンプ)、2日目、轟橋-ロッジきよかわ-岩戸の景観
D:滞迫峡-カワセミ公園 (徒歩か自転車で戻る)
参考サイト
■第一日目 権現淵→犬返り橋4.5km 5時間
~自然の彫刻の見事さに圧倒され、神秘的風景が随所に展開する。~
入渓地点は傾山へ九折登山口の途中の橋から川に入る。まず権現淵が真正面に見える。ここがスタート地点。権現淵は高さ10mの廊下をなして上には今通ったばかりの橋が掛けられて暗い。しかしボートに乗ると意外とあっけないと感じるであろう。権現淵を過ぎるとゴーロの河原へ、幅100mもあろうか、夏は熱く辛抱して300m歩くと、ゆったりとした流れに添ってボートを漕ぐ。左の壁が美しい柱状節裡となって川幅が狭くなる。ゴーロの谷となるが水際の楓や自然林の風景が目を引く。屶取り渕(なたどり)へ、右より九折川が合流している。川幅が広く、石ころのが点在する風景の中をボートを漕いだり歩いたりしすると高さ10m程の巨大な石が3個並んで立っているのを見る。次は長いゴーロを歩き、淵を過ぎると今度はまっぷたつに割れた“宇宙創生の卵”と呼ばれる巨石に達する。振返るとこの卵と岩峰が見事な配置を見せている。そこを過ぎるとまたゴーロだが自然林の中から目もさめるような鮮緑色のエメラルド石を発見するだろう。ここは巨木の根が芸術的な曲線を描き出す見所もたくさんある。やがてこの川の前半のクライマックス、田下淵にさしかかる。川幅もぐっと狭くなり、近づくとぐちゃぐちゃとなった壁には木がへばり付いて、短い淵だが高さ50mの壁が迫る。次の淵は左から大きくハングして壁が落ちてきそうで圧迫感十分である。さらに5mくらいの奥行きもある大穴も見出だす。ここを過ぎると“自然彫刻の園”トポロジー岩に達する。岩が柱を残すように削れてその柱にも別の穴があり、みごとな造形という他はない。トンネル岩など、ここにはそうした岩がたくさんある。川幅も狭くゴーロの谷を漕いだり、歩いたりすると緒方三郎が裸のまま座ったと言われる岩のある「水法院」(すいごういん)に達する。すぐ左に発電所が見えて一日が終了する。■第二日目 犬返り橋→杓子岩6km 7時間
~二日目は滞迫峡の白眉とも言える奥嶽橋の下の淵と中島淵を辿るコースで緒方町の絶景の一つである。まずはじっくり堪能して欲しい。~
奥嶽橋の下の淵は滞迫に行く途中で長さ200mにわたって岸壁をなしており、トメさんにまつわる悲恋物語がある。犬返り橋より入渓、橋の直下は渦を巻いており、右の岸へ移る。右は高さ50m左は10mの廊下で、ボートは流れにまかせてゆっくり流れる。右に曲り切ると、突然、壮大な岸壁が目前に現れる。奥嶽橋の下の淵は滞迫峡の代表する景観で、緒方町の見所の一つである。そばに寄ると高さ80mにも達する柱状節裡が圧倒する。 奥嶽橋の下の淵の瀬はわずかで次の淵で右に渡り、岩岸を滑らないように歩く。ここから左右の原生林が美しい眺めを提供してくれる。適当なところから左へ渡る。途中フットボール状の穴の開いた岩がある。左岸は草付きの河原で歩きにくい。しかしここから白眉とも言える中島淵、漆淵、重太郎淵が続く。急流を下ると中島淵で廊下状の淵に巨大な石が真中にある。烏帽子岩などの奇岩があり、日本庭園も思わせる景観に時間をたつのも忘れそう。中島の廊下には小原と滞迫を結ぶ橋がかけられている。橋の下が白石と呼ばれ、振返ると照葉樹の森が目に映える。次の瀬はビニールボートでは通過可能でコース選択の楽しさがある。やがて漆淵となり奥嶽橋の下の淵に投身したトメさんを追って恋人のマツさんがこの淵に飛込んだが途中の松に引掛かってしまったと言う松がある。下から眺めると岩から直接生えているように見える。ここから川は右へ大きく蛇行して急流となるが通過可能である。ここはラフト気味に下ると楽しい。つぎに現れるのが重太郎淵で右より“絹糸の滝”が水を落としている。今度は左に蛇行して瀬となる。これも通過可能だが勇気がいるので歩こう。やがて妙見橋が見えてくると河原に達する。小さい堰堤を過ぎると左より妙見神社が見え、正面には大崩壊した壁が荒々しい姿を呈している。ここから歩くと右に曲り、壁の下に暗い部分が見えてくる。近付いてみると、巨大なテラスで奥行き10mはある。中に入ると押し潰されそう。ゴーロの谷歩くと清川村に入り、水の流れが急流となって大きく右に回り再び戻っていて、壁のカーブが見事である。また小さな廊下があり、河原を歩く、ここからはU字型のナメで水流が幅広く流れて、歩くのもよし、ボートで行くもよい。そこを過ぎると大きな淵に達して杓子岩にたどり着く。杓子岩一帯は二重の石橋のアーチが連携をなしてかかっている。清川村を代表する風景だけあってそれは見事である。滞迫峡はここで終了するがこの先も見所があるが水田からの流入もあって水臭くなる。
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